【番外編】 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
確かに俺はタイムを殺してやりたいと思った。
だがそれは、依頼だからだ。それ以外は何も無い。
俺は正常だ。正常なんだ。どこもおかしくない。


“君がこんなに感傷的になるなんて...。まぁ君がそう言い張るのなら、僕は何も言わないよ。”

「そーかよ。」


意識が引っ張られる。
気が付けば辺りが暗く、後ろを向けばケビンがいた。

髪が長く、見た目は完全に女だ。対して俺は両方の髪が短く、10年前のあの姿になっていた。
俺はケビンを見つめる。


“何のつもりだ?...ケビン。”

“別に何でもないよ。君と話がしたかっただけさ。”


やけに積極的なケビンに俺は、何らの疑いをせずにはいられなかった。
ケビンは優しく微笑むと、口を開いた。


“もしかしたら君が僕にしている様に、誰かをあの子に重ねて見ているのかなって...”

“違ぇーよ。お前こそ何だ?タイムにヤキモチか?”


ふざけた口調で俺はケビンに言った。
ケビンは頬を膨らませた。


“僕はこれでも男だよ!”


俺は謝罪の言葉とともに、ケビンの頭を撫でた。
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