【番外編】 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
「...さようならだ。」


俺はタイムの腕を引いて自身に近付けると、タイムの頭を固定して唇を重ねた。
驚きでタイムの目が見開かれる。
タイムの唇は柔らかく薄かった、とても気持ちがいい。

俺は其の間に喉を横からナイフで刺した。
血が込み上げてきて、俺の口内まで達した。俺は其の血を拒むことなく、受け入れた。鉄の味が広がる...。

タイムの体から体温と、生命の輝きが失われていくのが実感出来た。
やがてタイムの体から力が失われ崩れ落ちる、俺はその体を抱きかかえ尚も口付けを止めない。

そして、叫ぶ事無く...タイムは死んだ。
唇を離すと、俺の口から血が滴れた。タイムの血だろう。


「...ありがとうな、愛してくれて。」


タイムの形をした肉塊にそう告げた。


「ありがとう...〝ティー〟」


その時初めて、俺は彼女の名前を呼んだ。
もう彼女は俺の名を呼ばない。決して...




俺は彼女の死体を後にして、ドールの元へ向かった。
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