【番外編】 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
俺はやっとの思いでベッドから起き上がった。
着替える事さえ億劫になった俺は、そのままリビングへと向かった。

リビングにはギフトとドールしか居なかった。
ディーブはまだ寝ているのだろうか。
日は既に高く昇っていた、こんな時間まで寝ているなんて、珍しいな。
ギフトは俺を見ると、何時もの笑顔を向けた。


「調子は如何だい?ちゃんと僕が見える?」

「何言ってんだ、お前...。俺、視力落ちた覚えねぇーけど。」

「ちゃんと見えてるならいいんだ。」


何をおかしな事を言っているのだ。
ギフトがおかしいのは何時もの事だから、深追いはしないけどな。

何か忘れている気がする...。
何度かこのような経験はあるが、一体何を忘れたのだろうか。
その前に何故俺は、眠っていたんだ...、俺の最後の記憶は病院の前だった筈なのに。
そうだ、タイムを殺さなくては...。


「おい、タイムは!?」


俺はギフトに問いた。
悲しそうな目でギフトは俺を見つめた。
何だよ、その顔は...。


「やっぱり覚えてないんだね。...君の最後の記憶は何だい?」

「病院の前だ!!いいから、タイムは如何なったんだ!?まだ殺してねぇーぞ!」

「そんな前から無いのか...。セルリア、よく聞くんだ。...タイムは死んだ、君が殺した。」

「...俺がか?だって何も、覚えてねぇーんだぞ...。」


何も覚えてないんだぞ...、何も。
俺は両手で頭を抱えた、そんな事をしても忘れられた記憶は何1つ返ってこない。
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