【番外編】 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
まるで、俺ではない誰かが殺したみたいではないか。

ギフトが俺の肩を手を置く...慰めのつもりなのか。
そんなものは要らない。
返してくれ、俺の記憶を返してくれ。


「好きって言ってたね〜、あの子。」


ドールの声が聞こえた。
カメラを大事そうに抱えているドールに視線だけ向ける。
如何して、ドールがそんなこと知っているんだ。


「ボク一緒に行ったし〜。」


見透かしたような台詞を述べる。
ギフトがその言葉に反応して、金色の瞳を輝かせた。


「やっぱりあの子セルリアに気があったの?」

「うん、そうだよ♥ボク聞いたもん♥」


三十路手前の男2人が、10代の女がしそうな話に花を咲かせている。
いい光景とは言えない。


“僕も覚えてるよ。”


ケビンの声が頭の中に響く。
何だか...先程まで思い詰めていた気持ちが、少しだけ軽くなった気がした。
此奴等見ていると、そんな事気にすることでもない気がした。
忘れても、何時か思い出せるかもしれないではないか。



セルリアの影に潜むケビンは、そんな彼の思いに相反してこう思っていた。

『決して思い出させてはいけない』
と、

思い出してしまえば、きっと彼は壊れてしまう。
そう思えてならなかったのだ...。





































【美しく消えるより】《完》
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