【番外編】 Sicario ～哀しみに囚われた殺人鬼達～

色のくすんだ野菜を乗せている荷台の近くに、お姉さんは立っていた。
其のお姉さんは僕の予想通りベティだった。
ベティもぼくに気が付くと、笑顔で手を振ってくれた。
ぼくはどう返せばいいか解らず、少し焦ったがベティと同じように手を振り返した。

荷台へ近付くとベティが屈んで視線を合わせてくれた。


｢お散歩...?｣

｢まぁ...そんな所。お姉さんは、お仕事...?｣

｢うん、そうだよ。夕方には帰れるから、其れまで1人だけど大丈夫?｣

｢...大丈夫だよ。...お仕事...頑張って...｣


そう言うとベティが頭を撫でてきた。
其の表情が余りにも愛おしそうで、ぼくは初めてベティを哀れみ、そして同情した。
ベティもぼくと同じで過去に囚われている。
ベティは弟に、ぼくはあの家に...。





ぼくはベティと別れると、ベティの家に戻った。
もう、外を歩く気にはなれなかったのだ。