【番外編】 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
ベティは赤い目元を更に赤くして泣き出した。自身の弟の名前を呼びながら、返事が来ないと知っても、彼女は呼び続ける事を止めなかった。
ドールはそんなベティを、硝子細工(がらすざいく)のように優しく抱きしめた。


「...ドール、」

「ん?何~?」


ベティを優しく撫でながら、ドールは顔をぼくに向けた。


「似てた...。」

「えっ、何に?」

「ギフトに...。ギフトも言いそうな事、言ってた...から。」


ぼくの言葉にドールは目を丸くしてした。
数秒時間が経つと、ドールは遅れて吹き出した。
ぼくは感想を言っただけなんだけどな...。
笑われる事は嫌いだ。何だか馬鹿にされてるみたいで。


「そんな不機嫌な顔しないでよ~。
...嬉しくってさ、ボクと兄さんって目の色位しか似てなかったから。
似てるって言われると嬉しいんだよ。兄さんはボクの事すぐ睨んでくるけど...。」


ドールが悲しそうに瞳を伏せる。
自分で言っておいて、凹まないで欲しいな。
確かにギフトは露骨にドールを嫌っている。傍から見ていて明らかだ。


「だけどボクは兄さんを愛してるよ。
兄さんはボクをちゃんと見つめてくれたんだ。1番理解手してくれてる、ねぇ、ディーブもそう思うでしょ?」

「...うん。」


理解さているんじゃなくて、人心掌握に長けているんだと思う。
ギフトは顔色変えずに何だって出来る。
其れがギフト・ラーベストという人間だと思っている。


「ムーンを見てると、むかしの自分みたいでさ...イライラするんだよ。」

「だから、励ましたの?」

「違うよ、背中をポンって押したの。」


其れを世の中では“励まし”と、言うのではないのだろうか。
いまいちドールの考えている事が解らない。
いや、ギフトの考えている事もか...。
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