【番外編】 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
side:血塗れた芸術家
変な髪型の男に、ひたすら痛めつけられ気絶してしまったが...此処は何処だ。
目を覚ましたら知らない天井、動かない体、鼻に付く医薬品の臭い。
幸い頭は動かせる。首を左右に動かし、辺りを見回す。
薄暗い部屋の片隅に、パイプ椅子に座っている少年が見えた。
わたしが殺そうとしていた少年だ。
少年はわたしが意識を取り戻した事に気付いたのか、此方へ歩み寄ってきた。
少年は出会った時と変わらない無表情でわたしを見下ろした。
きっと良い作品になる、嗚呼創らせておくれ...。
「おじさん...今からぼくは貴方を殺そうと思う...。人を殺すのは簡単だ、殺す事に関しては...、それじゃ、お姉さんの気が晴れないと思う...。だからぼくは貴方と話をしながら、貴方を殺そうと思う...。話の議題はもう決まってる...、少し昔話に付き合ってもらうだけ...。」
少年は一方的に言い放つと、わたしの視界外から鋏(はさみ)を取り出した。
其れでわたしの小汚い服を切り裂いていく。
胸板が見えると、少年はまた視界外から今度はメスを取り出した。
メスでわたしの胸を切り開いた。
身を切られる痛みは壮絶なものだ。何せ繋がっているものを切るのだ。繋がりを切る...。
痛いだろう。
切られる痛みで体力が削り取られていく。
全身から汗が吹き出て、痛みから逃れようと体は無意味な動きを続ける。
少年は無表情と言う仮面を付けたまま、ゆっくりと語り出した。
「あるところに、1人の無力な少年がいました...。少年の父親は立派な医者です。
父親は息子に後を継がせたいのと...、母親の病を治す知恵を貰いたいと言う願いから、息子を軟禁状態にしました...。
少年は父親の思いに答えたくて、一生懸命勉強しました...。
...だけど、父親が求めるものは...少年の力量をはるかに超えたものでした...。」
少年は懐かしむように言葉を綴る。
わたしを切り刻みながら...。
「父親の願いも儚く...母親は死んでしまいました。
父親は其の日から...、人が変わってしまったかのように...、少年に当たりました...。
些細な事でも...父親は少年に手を挙げました...。」
少年は尚語り続けた。
わたしの視界には自分の腸が繋がったまま、取り出されている瞬間が写る。
「ある日...父親は少年に、硫酸を...左目付近に、かけました...。少年は当然の事ながら...左目の視力そのものを失いました...。
少年は其の日から...死の恐怖に囚われ続けました...。
そして...ぼくは、初めて...殺人を犯しました...。不思議と罪悪感は...ありませんでした。
唯、心の底から...自由を感じたと思う...。」
意識が保てない...。自身の内蔵を生きたまま見せられ続けた。
今、意識がある自分がおかしいと思い始めている。
少年の話は耳を掠めるだけで、頭にはやって来ない。
少年はわたしを切り開く手を止めると、顔をわたしに近付けた。
何も無かったかのように、其の顔には汗が1つも無かった。
「おじさんはもうすぐ死ぬ...。死に逝く者にぼくを、見せよう...。」
少年は髪で隠れていた顔の左半分を、わたしの方へ向けると髪を上げた。
霞む視界でわたしは少年の顔を見た。
皮膚が酷く爛れており、眼球があったと思われる場所は、一層皮膚が腫れ上がってた。
「う、...うつく......し、しい...」
「おじさんは変な事言うね...。
大抵は、死にかけていても...驚くものだよ...。」
変な髪型の男に、ひたすら痛めつけられ気絶してしまったが...此処は何処だ。
目を覚ましたら知らない天井、動かない体、鼻に付く医薬品の臭い。
幸い頭は動かせる。首を左右に動かし、辺りを見回す。
薄暗い部屋の片隅に、パイプ椅子に座っている少年が見えた。
わたしが殺そうとしていた少年だ。
少年はわたしが意識を取り戻した事に気付いたのか、此方へ歩み寄ってきた。
少年は出会った時と変わらない無表情でわたしを見下ろした。
きっと良い作品になる、嗚呼創らせておくれ...。
「おじさん...今からぼくは貴方を殺そうと思う...。人を殺すのは簡単だ、殺す事に関しては...、それじゃ、お姉さんの気が晴れないと思う...。だからぼくは貴方と話をしながら、貴方を殺そうと思う...。話の議題はもう決まってる...、少し昔話に付き合ってもらうだけ...。」
少年は一方的に言い放つと、わたしの視界外から鋏(はさみ)を取り出した。
其れでわたしの小汚い服を切り裂いていく。
胸板が見えると、少年はまた視界外から今度はメスを取り出した。
メスでわたしの胸を切り開いた。
身を切られる痛みは壮絶なものだ。何せ繋がっているものを切るのだ。繋がりを切る...。
痛いだろう。
切られる痛みで体力が削り取られていく。
全身から汗が吹き出て、痛みから逃れようと体は無意味な動きを続ける。
少年は無表情と言う仮面を付けたまま、ゆっくりと語り出した。
「あるところに、1人の無力な少年がいました...。少年の父親は立派な医者です。
父親は息子に後を継がせたいのと...、母親の病を治す知恵を貰いたいと言う願いから、息子を軟禁状態にしました...。
少年は父親の思いに答えたくて、一生懸命勉強しました...。
...だけど、父親が求めるものは...少年の力量をはるかに超えたものでした...。」
少年は懐かしむように言葉を綴る。
わたしを切り刻みながら...。
「父親の願いも儚く...母親は死んでしまいました。
父親は其の日から...、人が変わってしまったかのように...、少年に当たりました...。
些細な事でも...父親は少年に手を挙げました...。」
少年は尚語り続けた。
わたしの視界には自分の腸が繋がったまま、取り出されている瞬間が写る。
「ある日...父親は少年に、硫酸を...左目付近に、かけました...。少年は当然の事ながら...左目の視力そのものを失いました...。
少年は其の日から...死の恐怖に囚われ続けました...。
そして...ぼくは、初めて...殺人を犯しました...。不思議と罪悪感は...ありませんでした。
唯、心の底から...自由を感じたと思う...。」
意識が保てない...。自身の内蔵を生きたまま見せられ続けた。
今、意識がある自分がおかしいと思い始めている。
少年の話は耳を掠めるだけで、頭にはやって来ない。
少年はわたしを切り開く手を止めると、顔をわたしに近付けた。
何も無かったかのように、其の顔には汗が1つも無かった。
「おじさんはもうすぐ死ぬ...。死に逝く者にぼくを、見せよう...。」
少年は髪で隠れていた顔の左半分を、わたしの方へ向けると髪を上げた。
霞む視界でわたしは少年の顔を見た。
皮膚が酷く爛れており、眼球があったと思われる場所は、一層皮膚が腫れ上がってた。
「う、...うつく......し、しい...」
「おじさんは変な事言うね...。
大抵は、死にかけていても...驚くものだよ...。」