【番外編】 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
「ちょ、おは、にゃにすふんだよ!」
(訳:ちょ、おま、何するんだよ!)

「良いから黙って見てなさいよ。」


白虎に無理矢理視線を動かされた。
視線の先には、黒虎がいた。
誰かと話している様だが、路地の影で上手く見えない。
黒虎は依然として無表情だが、何処か楽し気な雰囲気だ。
白虎は何で黒虎をつけているんだ。


「何処の女よ...。」


ふと白虎がそうぼやいた。
女...?黒虎は誰かと付き合っていたのか。
何で弟の恋路に兄(姉?)が、首突っ込んでんだよ。


「ヤバッ!?こっちに来るわ!」


白虎は俺を連れたまま、大通りへ出て人混みに紛れた。
ケビンに買った本が濡れちまうじゃねぇーか。

白虎が漸く俺を、開放するとひと息ついた。
いや、俺が溜息吐きたいくらいだ。


「バレていないようね。」

「其れよりまず、俺に謝れ。」

「殴ったりしてないのに、何で謝るのよ。」

「ヘッドロックした事を、普通に謝れって言ってんだよ!!」

「あぁ、その事ね。」


如何やら白虎は、納得してくれたようだ。
そして、俺に抱き着いて頬にキスした。


「これでチャラね。」


突然の事で頭が追い付かなかった。
数秒経って俺はフリーズがとけたPCのように、正常に起動し始めた。


「なななっ何してんだよ!?」

「何ってキスよ。照れるものでもないでしょ。
あっ、其れ共初めて?」

「違ぇーよ!いきなりキスしてんじゃねぇって!!」

「照れてるもの可愛いわ~」

「...もう、如何にでもなれ。」


ケビンに買った本を、今一度雨に濡れないよう抱え直しながら、俺は早速2回目の溜息をついた。


「そうだ!ギフトちゃんの所に行きましょう!!」

「いや、待て...何でそうなった。」

「考えるより動いた方が早いわ!」


俺は白虎に手を引かれ、我が家である『Sicario』へ向かった。
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