【番外編】 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
椅子から立ち上がった俺をタイムは止めた。
ここで重要なのは、俺とギフトでは無く“俺”を引き止めた事だ。
何でよりによって、俺だけが呼び止められなければならないんだ。

ギフトは何時の間にか病室の扉から出ており、扉の隙間から顔を出してニヤニヤしていた。


「2人とも、ごゆっくり〜。」


そう言い残して、帰ってしまった。
このまま帰るのは気まずくて、俺は嫌々ながら再び椅子に腰を下ろした。
タイムは何を思って俺なんかを、引き止めたのだろうか。


「あの!お話がしたいんです!!私凄く暇で、暇で仕方なかったんです!だから、お話をしましょう!」


ギフトの笑顔とは違って、無垢な笑顔にどう接すればいいのか解らず、只タイムの勢いに負けてしまった。
こちら側には無いその笑顔の耐性が俺にはない。

それと同時に、俺はこの無垢さをとうの昔に捨ててしまったのだと、身を持って知らされた。
そうだろうな。今や俺は、快楽殺人者に過ぎない。
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