【続編】2月14日
翌日、仕事に向かう途中、ふと思い立ち、行きつけの本屋へ寄ることにした。
「悠…真…?」
和仏辞書を手に取り、見定めていたとき、聞き覚えのあるあの声で僕の名が呼ばれた。
振り返ると、やはりそこには、君がいた。
「やっぱり…悠真だ…」
大きな瞳に涙を浮かべて、まっすぐに僕を見つめる君。
薄茶色の瞳にいつになく高鳴る胸。
ああ、やっぱり僕は、君が好きだ。
「なんでここにいるの?」
「会いたかった」
噛み合わない言葉を交わして、君は僕に抱きついた。
状況が、理解できない。
どうして君が、僕に抱きついてるんだ?
「私のこと、嫌いになった?」
まだ潤んだままの瞳で、これ以上無いくらいの完璧な上目遣いをする君。
「嫌いなわけないだろ、幼なじみなんだから」
「じゃあなんでメアドも電話番号も変えたん?なんでフランスにいるん?フランスで何してん?」
初めて君から畳み掛けられ、僕はたじろいだ。
「話すから、とりあえず車乗ろう」
「うん」
僕は手に持った辞書を棚に戻して、本屋から出た。