君色パレット
教科書を読み終わり、亮人は席に着く。
(…倉井もってことは、やっぱり、河下と喧嘩したのは、あいつ…河下を放ってばかりの張本人)
例えられないほど口惜しい気分になり、眠いような態度を取って亮人は机に突っ伏した。
顔を伏せて、亮人は頰の肉を噛む。
喧嘩をしたというのに、まだ小百合は斗真が好きなのだろうということが、亮人には辛かった。
(…俺の方が大切にできるのに。…もしも今 告白したら、河下は、なんて…)
その時、亮人の心の中に、むくむくと黒い感情が湧き上がった。
(そうか。今、河下と倉井は、少しだけ離れてる。今、俺が河下に告白したら…)
亮人は顔を上げて、無表情に斗真の方を見た。
斗真は黙って、教師によって板書された文字をノートに写し取っていた。
五限目が終わり、亮人は席で気抜けしたようにぼんやりとしている斗真に近づき、彼の目の前に立った。
「…あ、松嶋、なんかよ…」
「なぁ倉井。お前さ、付き合ってる奴とかいるよな?教えろよ」
「え?」
斗真は呆気にとられて亮人を見上げた。
亮人は気後れせず、愛想笑いを作って斗真に問いかける。
「別にむやみやたらに言いふらしたりしないし、からかったりもしないから」
「え…と…」
斗真は視線を左右に動かして、言いあぐねているようだったが、やがて諦めたように答えた。