はるのリベンジ
2月21日。屯所中が、騒然となった。
「山南さんが、いない!」
幹部全員、召集がかかった。
しばらくして、幹部が出てきた。
はる「あ・・・。」
沖田「あ・・・。」
沖田助勤と、ぶつかりそうになる。
沖田「行ってくるね。」
はる「お気をつけて。」
沖田「うん。ありがとう。行ってきます。」
そう言うと、沖田組長は、ポンと一度、私の頭に手を置いて出て行った。
私達は、近場を探す。
2月23日。
沖田組長と一緒に、山南総長が帰ってきた。
夕刻。切腹を言い渡されて、夜に、幹部のみで水盃(みずさかずき)を交わす。
そして、沖田組長の介錯で切腹された。
私は、庭先で、泣いた。
ザザッ。
振り向くと、山崎さんが立っていた。
はる「山・・崎さん・・・っ。」
山崎「梅・・・。」
ギュッと抱きしめられる。
はる「俺・・・っ。ひっく。俺・・・。止めれなかったっ・・・。わかってたのにっ・・・ひっく。山南総長が、辛いのっ・・・。」
山崎「誰のせいでもあらへん。」
はる「でも・・・。俺、拷問の時に、酷いことっ・・・ふぐっ。ひっく。」
山崎「それは、許してもろたんやろう?」
はる「でも・・・。」
山崎「もう、何も言わんとき。俺の胸で泣いとき。」
山崎さんは、私の顔を、自分の胸に押し付ける。
すると、ポツリと呟くように言った。
山崎「山南総長なぁ・・・。立派な最期やったんやて。沖田組長に、声かけるまで、刀を振るな、て言うたらしいで。」
はる「そうですか・・・。」
山崎さんは、手で私の頬を包み、親指で優しくさする。そして・・・。
接吻された。
山崎さんは、私の耳に、唇を当てて、囁く。
山崎「梅・・・。監察として、ようやった。でもな、まだ、残ってる。土方副長と、沖田組長を頼む。」
はる「え?」
山崎「沖田組長は、兄さんみたいに慕ってた人を、介錯した。本来なら、光栄な事やけど、苦しいと思う。んで、土方副長は、数日前に口論になってた。」
はる「あ・・・。」
山崎「また、天井裏におったんか?」
山崎さんは、呆れるように言った。
はる「はい。まぁ・・・。」
山崎「他の人は俺が行くから、この二人は、梅が行ったり。」
はる「山崎さん。」
山崎「ん?」
はる「山崎さんも・・・。」
私は、ギュッと抱きしめて、背中をポンポンとした。
私は、そっと、離れて、
はる「ありがとうございました。」
山崎「いや。じゃあ、頼む。」
そう言って、私達は、一瞬だけ微笑み合い、お互い夜の闇に消えた。