はるのリベンジ
私は、その夜、一人縁側で月を眺める。
はる「山南総長・・・。町の人も、新選組の皆様も皆、あなた様との別れを惜しんでおられました・・・。」
しばらく、月を眺めていると、隣に誰かが立った。
はぁ・・・。今この人の相手とか、ヤだな・・・。
伊東「山南総長は皆に好かれていたんですねぇ・・・。」
はる「はい。あの方の人徳が成せる事だと思います。」
伊東「ふっ。生きてる時には、話を聞いてもらえなかったのに、死んだ途端に、惜しまれるとは・・・。」
今、この人、鼻で笑った?
私は、前から、疑問に思っていた事を聞いた。
はる「あの・・・。伊東参謀にお聞きしたい事があります。」
伊東「何でしょうか?」
はる「どうして、山南総長と行動を共に、されなかったのですか?思想もよく似ていらっしゃいますし、話も合って仲も良かったじゃありませんか・・・。それなのに・・・。」
伊東「あんな頭の固い人はいりません。」
はる「は?」
伊東「確かに、山南さんとは、思想も似てる。話も合う。でも、あんなに頭が固いと、上に行くには、時に、邪魔になる。今回のようにね・・・。」
何?上?
伊東「私はね・・・。この新選組を、尊王攘夷の代表になるような隊にしたい。そして、この乱れた世で、名を残したい。それには、頭を柔らかくしないと・・・。あなたのように。」
はる「俺ですか?」
言ってる意味がわからない。
伊東「ふっ。利がある方に動くと言うことです。今は、幕府側が有利。ここの局長になれば、名は上がる。もし、幕府側が、ダメになったら、倒幕派に変わる・・・。その時に、あなたが、口を利いてくれると嬉しいんですがねぇ。」
はる「なっ!」
何なの!?この人を信じて、山南総長も藤堂組長も、新選組を託しているのに!
はる「さ、山南総長も、藤堂組長も、あなたなら、この新選組が尊王攘夷の活動が出来るように、変えてくれると思ったから、あなたに、志を託したんじゃありませんかっ!」
伊東「勿論です。それは、私も、そう思います。」
はる「でも、新選組は、会津の・・・。」
伊東「そんな、くだらない“義”にこだわっていると、命が幾つあっても足りませんよ?上手く生きないと。ふふふ。」
はる「なんて奴・・・。」
伊東「だから、頭の固い人は、要らないということです。」
はる「それが、あなたの本当の姿ですか?」
伊東「どれも、私です。」
私は、思いっきり、伊東参謀を睨む。
伊東「それに、あなたも、ここをもうすぐ出て行くんでしょう?私が、局長になった暁にはどうぞ、よろしく。まぁ、山南さんも良かったと思いますよ?最後だけ、惜しまれたのですから。」
ブチッ。
何かが、弾けた。
私は、抜刀した。