はるのリベンジ
慶応2年、2月になると、先生の様子がおかしくなった。
はる「何か、ソワソワしてる。というか、何かを、隠している。」
その証拠に、泊まりだと言って、帰ってこない日がほとんどだ。
新しい女でも出来たのか?
久しぶりに、帰ってきた先生は、少ししたら、すぐに出るという。
はる「東行先生!新しい女が出来たのですか?それなら、私は・・・。」
東行「ち、違う。違うんだ。」
はる「何を隠していらっしゃるのですか?もし、教えてくれないのなら、自分で調べて、出て行きます。影ながら、先生のお役に・・・。」
東行「違う!出て行くなんて、言ってくれるな。言うから!実は・・・。妻が来てしまった。」
はる「え!?奥方様が!?」
東行「あぁ。子供と、母も・・・。お前のことは、言ってあるが、その・・・。妾とは言ってない。一緒に暮らしているとも言ってない。」
困り果てたような顔で、言っているので、噴き出してしまった。
はる「ぷっ。あははははは!東行先生!それで、ソワソワしていらっしゃったんですか?先生も頭の上がらないお方がいるとは。」
東行「そう言ってくれるな。」
ぎゅっと抱きしめられ、口付けをされる。
はる「では、奥方様達は、どちらに?」
東行「白石邸におる。」
はる「なるほど・・・。かしこまりました。では私は、梅之助になります。先生のためなら何でも致します。」
東行「はる・・・。」
はる「東行先生。梅です。」
東行「あぁ。すまぬ。」
はる「こればかりは仕方ありません。波風立たぬように、ここへは、来なくて結構です。」
東行「それは、俺が無理だ。」
ぎゅっと抱きしめられて、口付けを交わす。
はる「でも、こんな事をしていたら、奥方様も気分は良くありません。」
東行「あぁ。わかってる。わかってるが・・・。少し、考える。」
はる「ちょ、ちょっと。東行先生!」
先生は、私を押し倒し、唇を重ねる。
はる「東行先生!いけません。」
東行「だから、無理と言っただろう?」
私も、先生に、触れて欲しい。
そして、少しの時間を惜しむかのように、愛し合い、先生は、奥方様の所へ帰って行った。
はる「わかってるけど、胸がズキズキ痛い・・・。」
自分が、妾だと思い知らされる。所詮、奥方様には、適わない。
東行先生に、迷惑だけは、かけてはダメだ。
いつの間にか、涙がこぼれていた。