はるのリベンジ
そして3月21日に長崎行きの船に乗る。
はる「伊藤様。初めまして。小川 梅之助です。」
伊藤様は、ジーッと、私を見つめて、
伊藤「よろしくね。俺は、伊藤 俊輔だ。」
すると、伊藤様が、袖を引っ張って、小声で話す。
伊藤「ねぇ。君が、谷さんの愛妾さんだよね?あの新選組に入ってたっていう・・・。」
はる「はい。東行先生のおかげで、成すことが出来ました。」
伊藤「そっか。良かったね。ところでさ、谷さんって、おなごの前だと優しいの?」
はる「ぷっ。確かに、おなごの時は優しいですが、男になってるときは、物凄く怖いときがあります。時に、熱が入ってしまうと、止められないし、すぐ・・・。」
東行「すぐ、何だ?言ってみろ?梅・・・。」
はる「ぬ、盗み聞きですか!?」
伊藤「ちょっと、梅君!」
はる「あ・・・。」
東行「盗み聞きなんぞするかっ!お前らの声がデカいんだっ!」
ボカっ。ボカっ。
伊藤・はる「すいませーん。」
頭に拳骨された。
はる「そうやって、すぐ怒るんですよね。」
伊藤「はははっ。そうそう。」
終始、このような旅となる。
私は、東行先生から、船の仕組みについて学んだり、伊藤様から、エゲレスの言葉を学んだりと、忙しかったが楽しい旅をしていた。
しかし、長崎に着いて、思いがけないこととなる。
長崎の薩摩藩邸で、薩摩に入るのは危険だと言われたのだ。
何でも、長州の事を良く思っていない者も、沢山いるとか・・・。
まぁ、長州も同じ様なものだが・・・。
そして、早く用事が済んだ東行先生はニヤリとする。
東行「さぁ!伊藤君!梅!行くぞ!ふふふふふふ。」
はる「何ですか?」
伊藤「聞いてなかったの?エゲレスに行くんだよ?」
はる「え!?エゲレス!?」
東行「あぁ。エゲレス。だから、お前が行くと言ってくれた時は、嬉しく思った。」
はる「聞いてないですよ!でも・・・。東行先生が行くとこ梅もありです!どこまででも、ついていきます!」
東行「あぁ。では、まず、上海に行くぞ。」
そうして、計画されていたが・・・。
伊藤「何か、雲行きが怪しくなってますね・・・。」
東行「あぁ・・・。」
以前から、広島で続けられていた幕府問罪使と長州藩との会談が上手くいっていないようだった。
それは、つまり、戦になる。ということを意味する。
東行「エゲレスは、今回、諦めよう・・・。」
伊藤・はる「はい。」
そして、港を歩いていると・・・。
はる「あ・・・。東行先生!アレって売り物ですか?個人では、無理ですよねー。あんなのは、藩とかで買うんでしょうねー。」
東行「ん?あぁ・・・。あ!!そうだ!それだ!梅!でかした!」
はる「え!?何がですか?」
東行先生は、なんと、36250両で蒸気船を長州藩が購入するとの契約を独断でしてしまった。
伊藤「36250両・・・。」
はる「勝手に独断でこんなもの買って大丈夫なんでしょうか?」
伊藤「さぁ?怒られるかもね・・・。はははは・・・。」
東行「何を言う。うちには一隻しか、蒸気船が無いんだぞ。この軍艦があれば、勝てる!」
そして、そのまま、その船に乗り、下関に帰った。
やはり、反対意見も多かったが、東行先生は熱心に藩の人達の説得に当たった。
そして、この船は、そのまま、購入するとの事になる。
名前は、『丙寅丸(へいいんまる)』と付けられた。