はるのリベンジ









すると、武五郎様が来られた。




確か、武五郎にも、先生は、文を書かれているんだった。





私は、武五郎様に部屋に通した。






武五郎「久しぶりだな。」



はる「はい・・・。お久しぶりです。」




武五郎「元気そうで何よりだ。」



元気?皆、元気を出せと言っていくのに、武五郎様は、私が元気に見えるんだ。




文を読んで、少し元気になってるのかもしれない。




武五郎様は、どこか、嬉しそうな顔をしている。



はる「何か、良いことでもあったのですか?」



武五郎「あぁ。やっとだ・・・。やっと、邪魔者が居なくなった・・・。」




はる「え?」


最後の方は、ポツリと言ったのか聞こえなかった。




武五郎「いや。何でもない。谷殿から、文が来て、届けに来た。」



はる「ありがとうございます。」



武五郎「でも・・・。渡せない。」



はる「え!?」



どうして?




すると、武五郎様は、ハッキリと言った。




武五郎「俺と夫婦になったら渡すよ。」




夫婦?武五郎様と?



そんなの、無理だ。




はる「そんなの、無理です。」



武五郎「じゃあ、文は燃やす。」



燃やすと言う言葉に、武五郎様の目を見ると、本気のようだった。




私は、確かに、この人と昔、夫婦になろうと思ったが、今と昔では、もう違う。私の愛している人は、東行先生だ。



でも、どうすれば?



考えていると、抱きしめられた。



武五郎「おはる・・・。俺のものになって・・・。元に戻るだけだ。そうだろう?」





はる「私は・・・。」




すると、顎を掴まれ、無理やり接吻をされる。




はる「!!嫌っ!」



腕を振り解くと、武五郎様は、「また、明日来る。」と言い帰って行った。




それから、武五郎様は、部屋に住み着いてしまった。



一日中、私を抱きしめて、口付けをする。


それが、少しずつ深いものになっている。


はる「お願いです。東行先生の文を頂けませんか?」



武五郎「おはるが、俺のものになるなら、渡してやっても、構わないが?」



はる「そんな・・・。」



私は、説得しようと考えて、今までの事を話した。




はる「だから、東行先生に、そそのかされた訳ではないんです。あの時、先生は戻って、婚礼を挙げろと仰ったのに、私が、復讐を選んだんです。」



黙って聞いていた武五郎様は、苦しそうな顔で、話し始める。



武五郎「俺は、あの後、他のおなごと夫婦になった。」



はる「え?」



そうなの!?だったら何故、私にこんな事を言うの?



武五郎「夫婦になったけど・・・。ダメだった。おはるの事が忘れられなくて・・・。妻を斬った。」



はる「斬った・・・?」



武五郎「あぁ。その時、思った。おはるじゃないからだって・・・。アイツは・・・。お香枝は、全く、まぐわろうとしない俺に、のしかかってきた。事情を知ってるくせに、欲情に負けたんだ。だから、斬ってやった。」



はる「そんな・・・。」



武五郎「谷殿の愛妾の噂を聞いたとき、おはるじゃないかと何故か気になった。そして、谷殿がこの村に来るって、聞いて、見張ってた・・・。絶対、妾も来るって思ったから・・・。見て驚いたよ。おはるが、凄く綺麗になってて、幸せそうに笑ってる君を見たときに、怒りが沸いて出た。アイツに向けられている笑顔は、本当だったら、俺に向けられていたはずなのにって・・・。でも、もうアイツはいない。時間は沢山あるんだから、ゆっくり愛し合えばいい。」



そして、武五郎様は、私の首筋に、唇を押し当てた。



はる「では・・・。どうして、私が、婚儀のお断りの文を出したとき何もされなかったのですか?」



武五郎「それは・・・。噂が上がったから・・・。」



はる「噂って何ですか?」



武五郎「君の父上が、間者で、失敗した途端に、向こうに、長州の情報を売ったと。だから、君とは、関わってはダメだと思った。」



保身の為じゃない。しかも、父上になる人を疑うなんて!



はる「では、私にだって・・・。」


武五郎「君は、長州の為に、戦ってたじゃないか?誰も、君を悪くは言わないよ。」



武五郎様は、ギュッと抱きしめる腕を強くして押し倒して来た。

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