はるのリベンジ
部屋に戻ると、沖田組長が、かすていらを食べている。
はる「沖田組長・・・。また、食べているんですか?」
沖田「やっぱり、長崎のかすていらは美味しい!」
はる「歯が痛くなっても知りませんよ?」
沖田「大丈夫、歯には気を遣ってるから♪」
はる「そうですか・・・。沖田組長!今度、久しぶりに手合わせして欲しいんですが・・・。」
沖田「良いよ~。でも銃ばっかり触ってたんでしょ?鈍ってるんじゃないの?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。
はる「毎日、鍛錬はしてました!でも、なかなか、沖田組長や斎藤組長の腕を持ってる方がいなかったです。」
沖田「そっか。では、致しましょう!私が勝ったら団子奢ってね?」
はる「えー。沖田組長、剣術師範じゃないですか?教えて下さいよぉ!せ・ん・せ!俺も銃を教えてるのにー。」
沖田「仕方ないなぁ。梅ちゃんには、三割り増しで稽古してあげるね?」
はる「それ、ちょっと怖い・・・。」
沖田「はははっ。やっぱり、梅ちゃんといると楽しい!」
はる「そうですね。俺も楽しい。」
沖田「じゃあさぁ、夫婦になろうよ?きっと、楽しいよ?」
はる「はい。なりましょう。楽しそうです。」
沖田「え・・・?今・・何て?」
はる「え?楽しそうです。」
沖田「その前!」
はる「なりましょう?」
沖田組長は、目をまん丸にしている。
沖田「意味わかってる?」
はる「はい。」
沖田「私と夫婦になるって事だよ?」
はる「はい。」
沖田「何故?」
はる「え?」
疑いの目を向けられる。
沖田「今まで、ずっと断っていたのにどうして?」
私は、佇まいを正した。
はる「沖田組長。隠してることありますよね?」
沖田組長の目が一瞬だけ泳ぐ。
沖田「何のこと?別に何も隠してないけど?」
はる「体調は?」
沖田「どうして?」
はる「俺は・・・。私は、医術を学んでるんです。あと、調べる事も得意です。沖田組長!夫婦になるのに一つ条件を出します。医者に体を診てもらうことです!」
沖田「・・・。何それ・・・。」
みるみる沖田組長の顔に怒りが浮かび上がる。
はる「え?」
沖田「おはるちゃんは、私が病かもしれなくて、医者に診せたいから、私と夫婦になるの?バカにするなっっ!!!好いてもないのに、そんな理由で・・・っ。」
はる「好いてますよ・・・。確かに今は・・・東行先生の事を愛しています。きっと、この先、忘れるなんて出来ません。でも、沖田組長も私にとって大切なお方です。後で後悔したくありません。それでは、ダメですか?もし、沖田組長が、東行先生を忘れろと仰るなら、それは、絶対、無理です。それなら、もう、求婚するのは、やめてください。」
沖田「では、私との間にややこは欲しい?」
はる「ややこ?」
沖田「って、私の方がおなごみたいだ!夫婦になるって事は、私と家族になるって事だよ?私の方が先に、死ぬ場合もあるし・・・。それに、それに・・・。」
はる「沖田組長は、私とどうなりたいのですか?」
沖田「夫婦になりたいよ・・・。でも、私が病じゃなかったらおはるちゃんが、私と夫婦には、なりたくないのにって・・・。何言ってんだろう・・・。」
はる「沖田組長が、病でなかったら、嬉しいです。」
沖田「病じゃなかったら、夫婦になるのをやめる?」
はる「いいえ。私は、沖田組長と、ずっと一緒にいるつもりですが、ダメなのですか?ヤヤコも出来たら良いですね。賑やかになりそうで。」
沖田「その言葉が聞きたかった・・・っ!高杉の事は・・・。仕方ないって思ってる・・・。でも・・・。色んな所でやきもちやくかも・・・。」
はる「もう!女々しい!武士でしょ!!」
そう言って私は、沖田組長の背中をバシッと叩いた。
沖田「痛っ!」
はる「はははっ。」
沖田「おはるちゃんも梅ちゃんもモテるからいけないんだ。帰ってからの梅ちゃんは、色気も出てるし心配するよ・・・。」
何かブツブツ一人で言っている。
はる「何ですか?」
沖田組長は、佇まいを正した。
沖田「何でもない。コホン。おはるちゃん。ちゃんと、医者に診てもらう。だから、私と、夫婦になって下さい。」
はる「はい。ふつつか者ですが、よろしくお願いします。」
そう、答えると、沖田組長は、私を抱きしめた。
そして、唇を重ねた。
幾度も離れては、交わす口付けが、どんどん深くなる。
首筋に口付けをされて、沖田組長の手が、着物の上から身体をなぞる。
すると・・・。
「すみません。沖田組長!見廻りです。」
沖田「あ・・・。」
はる「あ・・・。」
二人で見つめ合う。
沖田助勤が、外の声を無視して口付けをしようとする。
はる「見廻りです。」
沖田「外の子、斬ってきて良い?」
はる「普通にダメですよね?何も悪いことしてないです。」
そして、この日、機嫌の悪くなった沖田組長は熱心過ぎるほど、見廻りをして、土方副長に負けず劣らない鬼になっていた。