はるのリベンジ
そして、しばらくして、梅ちゃんが来た。
人違いかと思うほど、変わっていた。
生気は失われ、目は虚ろ。
梅ちゃん・・・。
見ているこっちが辛くなる。
けれど、谷の文を手にした時だけ、とても、幸せそうな笑みを見せた。
梅ちゃんは、文を貰うとすぐに出て行った。
全員が、何とかしてやりたい。そんな気持ちになっていた。
そして、私は、梅ちゃんを追いかけると、近くの神社に入っていく。
様子を見ていたら、文を開けていた。
もうしばらく、ここにいるだろう。
私は、踵を返して、近くの甘味処で団子を買って、走って神社に戻る。
梅ちゃんは、寝転んで空を眺めていた。
良かった!いた!
そして、団子を渡すも、無理やり飲み込んでいる。
沖田「ねぇ。梅ちゃん。辛かったね。」
そう言うと、私は、梅ちゃんを抱きしめた。
沖田「梅ちゃんの気持ち・・・。よくわかるよ?私にも、近藤先生という師がいる。先生が亡くなったと思ったら、本当に苦しい。私は、先生の横で死を選ぶと思う。でも・・・。先生に死ぬなと言われたら・・・。今の君みたいになると思う。というか、何か言われてるんだったら、それを、死ぬ気ですると思うけど難しいんでしょう?私でよければ聞く・・・。そういえばさぁ、昔もこんな事あったよね?」
梅ちゃんの気持ちは痛いほどわかる。師と最愛の人を同時に失う事。それが、どれだけ苦しいか・・・。
すると、梅ちゃんはポツリポツリと話し始めた。
梅之助「私・・・。本当に幸せだったんです。先生と一緒にいれて・・・。向こうでも、銃の使い方とか、他にも色々教えてもらいました。先生は、私に、幸せになれって言う。心を動かされた人といろと言う。私は、信じてたんです・・・。病でも、先生は治るって・・・。でも・・・。どんどん弱っていくんです。そして、医者から、時間がもう無いって言われて、ご家族が来たんです。」
沖田「いじめられた?」
そう聞く私に、梅ちゃんは、首を横に振り、少し安堵する。
はる「私は、ずっと・・・。梅になってた・・・。先生の側から離れたくなかった・・・。でも・・・。私は、妾で・・・。他人です。あの時、ずっと、気持ちを押し殺してた。先生に、自分の気持ちも言わなかった。先生が居なくなって・・・。そうしたら感情が、壊れていくんです・・・。男だったら、泣いてはいけない。って踏ん張ってたら、泣けなくなって・・・。眠れなくなって・・・。」
苦しい気持ちをずっと我慢してたんだ。泣けなくなってたのか・・・。
私は、背中をさすった。
すると、梅ちゃんは、私の胸に顔をうずめて、泣き始めた。
そして、しばらくすると、泣き声がしなくなり、胸から梅ちゃんを少し離すと眠っていた。
沖田「おかえり。梅ちゃん・・・。」
そして、私は、屯所に連れて帰り、土方さんに報告した。
土方さんの答えは、「梅に決めさせろ」とのことだった。
私は、梅ちゃんを自分の部屋で寝かせる。
寝顔を見ていると、愛しさが溢れてくる。
そして、私は、梅ちゃんが隣にいることを実感したくて、褥に潜り込み、抱きしめる。
梅ちゃんの匂いや、柔らかな感触がある。
私は、ギュッと抱きしめて眠りについた・・・。