はるのリベンジ
梅ちゃんは、今度は、長崎に行った。
武器の調達などらしい・・・。
私は、会いたくて、会いたくて、梅ちゃんの帰りを待っていた。
やっと帰ってきた梅ちゃんは、約束通りかすていらを買ってきてくれた。
夕餉を終えて、私は、おはるちゃんからの土産のかすていらを食べている。
そこへ、おはるちゃんが帰ってきて、呆れている。
はる「沖田組長・・・。また、食べているんですか?」
沖田「やっぱり、長崎のかすていらは美味しい!」
はる「歯が痛くなっても知りませんよ?」
沖田「大丈夫、歯には気を遣ってるから♪」
甘いものに幸せを感じていると、
はる「そうですか・・・。沖田組長!今度、久しぶりに手合わせして欲しいんですが・・・。」
沖田「良いよ~。でも銃ばっかり触ってたんでしょ?鈍ってるんじゃないの?」
ちょっと意地悪を言うと、
はる「毎日、鍛錬はしてました!でも、なかなか、沖田組長や斎藤組長の腕を持ってる方がいなかったです。」
沖田「そっか。では、致しましょう!私が勝ったら団子奢ってね?」
はる「えー。沖田組長、剣術師範じゃないですか?教えて下さいよぉ!せ・ん・せ!俺も銃を教えてるのにー。」
沖田「仕方ないなぁ。梅ちゃんには、三割り増しで稽古してあげるね?」
はる「それ、ちょっと怖い・・・。」
沖田「はははっ。やっぱり、梅ちゃんといると楽しい!」
はる「そうですね。俺も楽しい。」
沖田「じゃあさぁ、夫婦になろうよ?きっと、楽しいよ?」
はる「はい。なりましょう。楽しそうです。」
沖田「え・・・?今・・何て?」
はる「え?楽しそうです。」
沖田「その前!」
はる「なりましょう?」
嘘・・・。聞き間違い?いや、なるって言った。
沖田「意味わかってる?」
はる「はい。」
沖田「私と夫婦になるって事だよ?」
はる「はい。」
沖田「何故?」
はる「え?」
でも、どうして急に、受けることにした?谷を愛してるから無理って言ってたのに・・・。谷の気持ちが無くなったとも思えない。
沖田「今まで、ずっと断っていたのにどうして?」
すると、おはるちゃんは、佇まいを正して、
はる「沖田組長。隠してることありますよね?」
体のことだ。おはるちゃんは、前から、体調や、怪我に対して、敏感だった。
沖田「何のこと?別に何も隠してないけど?」
はる「体調は?」
沖田「どうして?」
はる「俺は・・・。私は、医術を学んでるんです。あと、調べる事も得意です。沖田組長!夫婦になるのに一つ条件を出します。医者に体を診てもらうことです!」
沖田「・・・。何それ・・・。」
好いてるんじゃない・・・。医者に診せろと、土方さんにも言われてる。でも、私は診せていない。
夫婦になることで釣って、医者に診せようとしてるだけ・・・。そう思うと、怒りが湧いてきた。
はる「え?」
沖田「おはるちゃんは、私が病かもしれなくて、医者に診せたいから、私と夫婦になるの?バカにするなっっ!!!好いてもないのに、そんな理由で・・・っ。」
はる「好いてますよ・・・。確かに今は・・・東行先生の事を愛しています。きっと、この先、忘れるなんて出来ません。でも、沖田組長も私にとって大切なお方です。後で後悔したくありません。それでは、ダメですか?もし、沖田組長が、東行先生を忘れろと仰るなら、それは、絶対、無理です。それなら、もう、求婚するのは、やめてください。」
沖田「では、私との間にややこは欲しい?」
はる「ややこ?」
沖田「って、私の方がおなごみたいだ!夫婦になるって事は、私と家族になるって事だよ?私の方が先に、死ぬ場合もあるし・・・。それに、それに・・・。」
嬉しい気持ちと同じくらい情けない気持ちだ・・・。
素直に喜べない・・・。
はる「沖田組長は、私とどうなりたいのですか?」
沖田「夫婦になりたいよ・・・。でも、私が病じゃなかったらおはるちゃんは、私と夫婦になりたくないのにって何を言ってんだろう・・・。」
はる「沖田組長が、病でなかったら、嬉しいです。」
沖田「病じゃなかったら、夫婦になるのをやめる?」
はる「いいえ。私は、沖田組長と、ずっと一緒にいるつもりですが、ダメなのですか?ヤヤコも出来たら良いですね。賑やかになりそうで。」
沖田「その言葉が聞きたかった・・・っ!谷の事は・・・。仕方ないって思ってる・・・。でも・・・。色んな所でやきもちやくかも・・・。」
はる「もう!女々しい!武士でしょ!!」
思ってる気持ちを言葉にしたが、上手く言えない。でも、どうやら、病はきっかけで、私とこれからの人生を共に歩む覚悟をしてくれたようだ。
バシッと背中を叩かれ、キツい一言。
沖田「痛っ!」
はる「はははっ。」
沖田「おはるちゃんも梅ちゃんもモテるからいけないんだ。帰ってからの梅ちゃんは、色気も出てるし心配するよ・・・。」
本当に、私で良いのか不安になる。
はる「何ですか?」
私は、佇まいを正した。
沖田「何でもない。コホン。おはるちゃん。ちゃんと、医者に診てもらう。だから、私と、夫婦になって下さい。」
はる「はい。ふつつか者ですが、よろしくお願いします。」
やっと、やっと目の前の愛しい人が私の妻になってくれるんだ。
嬉しくて、抱きしめ、唇を重ねた。
幾度も離れては、交わす口付けが、どんどん深くなる。
おはるちゃんが欲しくて堪らない。
首筋に口付けて、おはるちゃんの身体を指でなぞる。
すると外から・・・。
「すみません。沖田組長!見廻りです。」
沖田「あ・・・。」
はる「あ・・・。」
二人で見つめ合う。
よし。聞こえなかった事にしよう。無視だ。
そう思い、彼女を求めると、手で制止される。
はる「見廻りです。」
沖田「外の子、斬ってきて良い?」
はる「普通にダメですよね?何も悪いことしてないです。」
仕方なく、見廻りしたけど、いつもより、少ーし荒めの見廻りになった。