はるのリベンジ
そんな時だった。
酒瓶を持ちフラフラ歩いていると、町の奴らが道を開けて、ヒソヒソと話しているのが聞こえた。
「壬生狼にやられたらしい。」
「何か人違いで殺されたらしいわ。」
へぇ。
俺は、近くで見たくなり、そっと近付く。
大八車を泣きながら一人で引いているその女。
東行「・・・っ。」
なんつー殺気垂れ流してんだよ。
あの屍さん、葬ったら、仇討ちってとこか。
あんなおなご一人で、剣豪集まる人斬り集団のあの壬生狼に?
東行「ふっ。・・・。面白れぇじゃねぇか・・・。」
俺は、わざと、女にぶつかった。
東行「痛ってぇな。」
「すいません。」
すると、ギュッと俺の袈裟を握りしめて、女は顔を上げた。
東行「っ。」
まだ、ガキじゃねぇか。
「お願いします。・・・。父にっ・・・。お経を・・・。」
この女は、バカなのか?自分で言うのも何だが、こんな酒臭い坊主がどこにいる。
俺だったら、絶対、こんな坊主には頼まない。
でも、この女の目の奥は、強い光が宿っている。
俺は、「ついてこい。」
と一言だけ言い、女をこの辺の町民の墓があるところを案内する。
町民が、墓場にしている場所まで、来ると、二人で穴を掘る。
むしろを捲り覗くと、
こりゃ、ひでぇ。
間違って拷問受けたって町の奴らが言ってたな。
間者に、間違われたなら、長州の同志か、天誅とか言ってる奴か、倒幕を掲げてる奴ら・・・。
東行「オイ。足を持て。」
二人で、穴に、屍さんを入れ、土に帰す。
手を合わせた。
女を見ると、
「父上・・・。必ず、仇を取ります。・・・。絶対・・・。」
やっぱり、そうか・・・。
俺は、大八車に乗っかり、寝転ぶ。
女は、ひぃひぃ言いながら、大八車を引いている。
大の男を乗せての往復は、そりゃしんどいだろう。
俺は、笑いを噛み殺し、目を瞑る。
すると、ウトウトして、意識を手放す。