はるのリベンジ
私は、裏から出て、門へ行く。



はる「すみません。入隊希望なんですが・・・。」



すると、門番をしていた人が、中に入っていく。



戻ってきて、案内してくれた。



「連れて来ました。」



「入れ。」



そう言われると、手で合図し、門番の人は、戻っていった。




私は、深呼吸をして、部屋に入る。



はる「失礼します。」



正座で佇まいを正し、お辞儀をして、深々と頭を下げる。



うわぁ。男の人が、並んで、沢山座ってる。




私は、真ん中に通された。


大丈夫。大丈夫。自分に言い聞かせる。



「名は何と申す?」


はる「小川 梅之助と申します。」


「小川君か・・・。そう言えば、同じような名の子がいたね。君は梅君と呼ぼう。」


はる「はい。」



「では、梅君。どこの藩の出身だい?」



来た。



はる「長州藩出身です。」


バッとそこにいた男達が一斉に刀に手をかける。



ふっ。東行先生の仰った通りだ。




すると、副長の部屋の主が睨みつけて言う。


「堂々と間者かよ。」


はる「まさか。俺は、長州の出身ですが、長州を恨んで脱藩してきました。俺の父は無実の罪を被せられ、拷問を受け死にました。だから、姉と一緒に、長州を出てきたんです。今は、知り合いに父になってもらい養子縁組みを組んでもらいました。そんな時、将軍様を御守りする壬生浪士組のことを知って応募させてもらいました。」



「まぁまぁ、トシ。そんな怖い顔で睨んだら可哀想だ。それで、梅君。君は、何を得意とする?」



はる「剣術、医術、密偵の真似事です。」



「テメェ、やっぱり、怪しいじゃねぇか!」



はる「それは、自分を信じて欲しいとしか・・・。」


「信じれる訳ねぇだろうが!」


はる「ではどうしたら信じてもらえますか?」


皆、黙ってしまう。




私は、先ほどの2冊を懐から出して、並べた。



それを見た副長という人が一瞬、固まり、真っ赤になった。そして、バッと発句集を取り上げて隠してしまう。



「お前がなんでこれを持ってるんだよっ!」


一人を除いては、他の皆はキョトンとしている。



その人は、お腹を押さえて、下を向いて震えてる。



あの人は、この書簡の存在を知ってるんだ。


そして、中の隠し言葉も解っているのかも・・・。だから、震えてるの?



どういう意味が隠されてるんだろう?


はる「密偵の腕を見て欲しかったんです。それには、上官の方の情報を取るのが一番だと思いまして。その書簡、副長と呼ばれていた方の部屋にありました。結構、手の込んだ所に隠されていたので機密文書の可能性が高いかと思いそれを拝借しました。しかし、その中の隠し言葉までは、解りませんでした。」



ずっと、お腹を押さえて下を向いていた人が言う。



「機密文書?隠し言葉?」


はる「はい。だから、あんなわらし同等のものになったのだと・・・。」


「ぶはっ!アハハハハハハ!もーダメ!お腹っ・・痛いっ・・・。アハハハハハ。機密文書・・・。隠し言葉・・・。わらし同等だってっ!」



「総司っっ!黙れっ!」



すると、赤くなっていた副長は、私の鼻と鼻が、付く位近付いて、



「オイ。梅・・・。このことは、忘れろ。忘れられるよな?あぁ!?」



私は、コクコクと頷く。


殺気だけで殺されるかと思った。



すると、真ん中に座っていた人がコホンと咳払いをする。



「梅君。君の密偵の実力は良くわかった。トシ。落ち着け。」


「あぁ。」


そう言って、元の場所に戻っていく。



ただ、長州藩出身の密偵得意の奴を入れるかどうか、悩んでいるようだった。




すると、笑い転げた人が、助け船を出してくれた。




「近藤先生。物は考えようですよ。だって、この人、屯所中を知ってしまったんでしょ?だったら、そのまま帰すより、ここで監視した方が良くありませんか?もし、怪しかったら斬っちゃえば良いんですよ。」




「確かにそうだな。では、梅君。共に、頑張ろう。」


はる「ありがとうございます!」



私は、深々と頭を下げた。


そして、自己紹介をされる。



近藤「俺は、壬生浪士組局長の近藤 勇だ。宜しく。」


山南「私は、副長の山南 敬助。宜しくね。」


「・・・。」


さっきの人が睨んでる。怖いよ。この人・・・。



近藤「ほら、トシ。」


土方「副長の土方 歳三。お前、間者だったらぶった斬るからなっ!」



沖田「もう。ちょっと、焦ったからってそんな怖いこと言って。気にしないでね。私は、副長助勤の沖田 総司です。宜しくね。梅ちゃん。」



永倉「俺も同じ、副長助勤の永倉 新八だ。宜しく。」


原田「俺も同じ、原田 左之助だ。仲良くやろうぜ!」


藤堂「俺も同じ、藤堂 平助だ。梅は、歳いくつ?」


はる「18です。」


全員「18!?」



藤堂「じゃあ、弟だな。宜しく。」


斎藤「俺は、斎藤 一だ。宜しく頼む。」



今は、見廻り等でいないという他の助勤の方は後でということになる。

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