はるのリベンジ
屯所に戻り、私は、沖田助勤の部屋に行く。
はる「沖田助勤。いらっしゃいますか?」
沖田「うん。」
部屋に入れてもらうと、また、金平糖を食べている。
はる「本当に甘味が好きなんですね。」
沖田「うん。大好き!梅ちゃんの団子も好きだよ!また作ってね?」
はる「はい。あの粉もまだまだありますし。沖田助勤。さっきの手当てしましょう。」
私は、沖田助勤の手を持ってきた桶の水で洗い、薬を塗る。
そして、包帯を巻いた。
はる「ちょっと、大袈裟になりましたが、明日には、取っても良いですよ。これしてたら、刀握れませんもんね。」
沖田「っ・・・。う・・うん。ありがとう。口開けて?」
私は、素直に口を開けると、ポンと何かを口に入れられた。
はる「甘い・・・。金平糖!ふふっ。ありがとうございます!」
沖田「ううん。私の方こそありがとう。」
はる「では、失礼し・・・。」
沖田「ねぇ。今日の土手の草摘み楽しかった。」
はる「そうですね。」
沖田「あ・・・。ねぇねぇ。梅ちゃんの剣ってさぁ。何流なの?」
はる「俺は、柳生新陰流です。沖田助勤は、」
沖田「天然理心流だよ。」
やっぱり剣のことにになると早いな。この歳で、塾長任されるって言ってたっけ?ただ者じゃないってことか・・・。妙に納得出来るなぁ。
沖田「今度、手合わせしてよ?」
はる「お願いします!あ・・・。そういえば、斎藤助勤は、ここではどの位の腕前なんですか?」
沖田「斎藤君?うーん・・・。二番か三番かな?」
はる「二番か三番!?」
そっか・・・。どうりで勝てない訳だ。ん?では一番って、誰?近藤局長?
沖田「どうして斎藤君?」
はる「今朝、手合わせを何度かしていただいたんですが一つも勝てなくて・・・。あのここでの一番って誰ですか?」
沖田「私だよ。」
はる「え・・・?」
この人が?おちゃらけてるこの人がここで一番の腕の持ち主?斎藤助勤より、強いの?
確かに、気配消すの得意だし、土方副長のあの殺気で殺されそうな空気にも飄々としている位だからただ者じゃないってあながち間違いでは無いって事か。
沖田「私が一番じゃ、不服?」
はる「いえっ。お若いから、驚いただけです。」
沖田「君の方が若いじゃない。」
そう言ってクスクス笑う。
その時、
スパーーーーン
襖が勢い良く開いたかと思うと、そこに、鬼が立っていた。
ひっ。
怖いよ。
私、ここへ来てから、土方副長の怖い顔しか見てない気がする。
土方「オイ・・・。」
凄みのある声が掛けられる。『危険!』とっさにそんな事が、頭に浮かぶ。
すると、沖田助勤が、
沖田「もぉ。土方さん!私には、襖を、開けるときは、声をかけてからって言うのに、自分は良いんですかぁ?」
それ!?今、言ってはいけないよねっ!火に、油を注ぐとは正にこの事。
土方「総司ぃぃ!至急、お前に聞きたい事があんだよ。テメェ、お勝手の棚にあった菓子、知らねぇか?昨日の昼間に届けられてあった菓子がよぉ、無いんだと。」
棚にあった菓子?まさか、昨日、食べてたヤツじゃ・・・。
沖田「あー・・・。あれなら、僕達で食べたよね?梅ちゃん?美味しかったよねーあれ。」
はる「え。あ・・・。でも、ほとんど、沖田助勤が・・・。」
土方「テメェら二人で食ったんだなっ!!」
はる「そうなんですが、違うんです!」
土方「あれはよぉ、大っ事な客に出す為に、前から頼んでおいた特注なんだよっ!」
沖田「だから、美味しかったんだ!」
はる「ちょっと!」
土方「二度と、つまみ食い出来ねぇように、口を斬ってやる。」
そう言うと、土方副長は、抜刀し、何故か、私を狙って、刀を振り下ろす。
スパンっ。
無意識に避けたが、今まで居たところは、刀が刺さってる。
はる「ひ、土方副長!!特注の菓子まではいきませんが、俺が、作りますっ!時間が無いんですよね?」
ピタリと、土方副長が止まる。
なんとか、それで、止まってくれたものの団子を作る事になる。
はぁ・・・。沖田助勤には、あまり関わらないでいよう。
命がいくつあっても足りない気がするし、あの人の周りは、危険がいっぱいだ。
私は、なんとか、団子を作り終えて、やっと休憩を頂けた。