はるのリベンジ
心の病
二日後、芹沢隊長と、新見さんの葬儀が行われた。
私は、葬儀には出なかった。
沖田助勤も、顔に怪我をしたためだ。
沖田助勤は、部屋から出ることを禁じられたが、私は、沖田助勤の看病という事だった。
八木家の勇五郎という八木家の次男が、あの時に足の指を切られたと聞いた。
沖田助勤は、八木の奥さんに
沖田「勇坊まで怪我したそうですね。」
と辛そうに、話していた。
八木「沖田はん。まぁ、あの状況で命があっただけでも良かったと思うておりますので・・・。」
沖田「そうですか・・・。」
この時の沖田助勤は、何かを耐えるような顔をしていた。
部屋に戻り、落ち込む沖田助勤に、みたらし団子を作り、持って行く。
はる「どうぞ。」
疑いの目・・・。
はる「今日は何もしてません。元気になって欲しかったので・・・。」
沖田「ありがとう・・・。」
そう言うと、沖田助勤は、団子を口に運ぶ。
沖田「美味しい・・・。」
すると、手を引かれ、ギュッと抱きしめられた。
首筋に顔を埋められる。
でも、今回は悪戯はしない。そう思う。
きっと、何も関係のない子供を巻き込んで、辛いんだよね・・・。
この人は、優しい。
私は、少しずつ、沖田助勤の見方が変わってきていた。
私は、沖田助勤の背中に腕を回し、トントンとゆっくり叩く。
しばらくすると、部屋の外から、「幹部会議です。幹部は集まって下さい。」という山南さんの声がした。
沖田「もうちょっと、こうしたかったけど、行かなきゃ。」
はる「はい。行ってらっしゃい。」
そう言うと、名残惜しそうに、沖田助勤は、部屋を出て行った。
一人になって、ハッとする。
はる「男同士っていうの忘れてた・・・。幹部会議。私も行こう。」
私は、また、部屋の天井裏に身を潜める。
近藤「今回の芹沢隊長の件だが、何者か解らぬ賊に襲われたという事になっている。よって、実行犯を長州系藩士とする。」
もしかして、私?
ゴクリと唾を飲み込む。
その言葉に、沖田助勤が、反応する。
沖田「梅ちゃんを犯人にするんですか?」
土方「いや。御倉 伊勢武、荒木田 左馬之助、越後 三郎。この三名を実行犯に仕立て上げる。」
なんて事を!!そっか・・・。前から気付いてて、この時の為に、泳がしていたの!?
そして、土方副長は、恐ろしい一言を言う。
土方「その粛清を梅にやらせる。」
永倉「踏み絵だな。」
土方「あぁ。アイツは、長州を憎んでいると言っていた。だったら、出来る。そして、梅が間者かどうかも見れる。一石二鳥だ・・・。」
沖田「でも、梅ちゃんは、たぶん人を斬ったことがないです。」
土方「あぁ。そうだろうなぁ。だから、良いんだろう。憎んでるなら斬れる。」
私は、気を失いそうになる。
でも、確かにそうだ。
死んだ後だったが、芹沢隊長を斬った時、何も、戸惑いはなかった。
私は外に出た。
そして、私は、黒装束のまま、身を隠した。
いた。
私は、越後さんに、近付き、口を塞ぎ、物陰に引き込む。
越後「何者っ!ふぐっ。」
はる「あんた、長州藩士だろ?殺されるぞ。すぐに仲間を連れて逃げろ。わかったな!」
そう言って、口に置いてた手を離すと、
越後「ふんっ!何奴かは知らんが、俺達が長州藩士?俺は、京の生まれだ。長州藩士の男なら、他に、一人いる。」
はる「忠告はした。すぐに逃げろ。解ったな。」
そして、私は、そのまま、長州藩邸に来ていた。
私は、桂様の前に飛び降りた。
バッと、桂様が、刀に手をかける。
私は、頭に被っていた頭巾を取る。
桂「君は・・・。高杉の・・・。」
はる「はい。小川 梅之助です。」
桂「どうしたんだ。こんな所に。」
はる「新選組の局長、芹沢 鴨が賊に殺されたというのはご存知ですか?」
桂「あぁ。でも、あれは、身内のイザコザだろう?」
はる「それを、長州藩士のせいにしようとしています。そして、狙われたのが、越後様達です。越後様には、忠告させていただきましたが、信じてもらえませんでした。どうか、桂様より、ご指示を!宜しくお願いします!」
すると、横から、殿方が声をかけてきた。
「もしかして、君が、高杉の愛妾ちゃん?」
振り向くと、ニコニコ顔の殿方が私を、興味深く見てきた。
はる「あの・・・。」
吉田「あぁ。ごめん。僕は、吉田 稔麿と申します。高杉の悪友。」
はる「あ!栄太郎様?」
吉田「そうそう。へぇ。この子か・・・。アイツがね。「もうベタ惚れです」って感じで惚気ちゃってるから一度は見てみたかったんだ。」
はる「はぁ・・・。」
吉田「ねぇ?桂さん?」
桂様は、「確かに。」と笑ってる。
吉田「頑張ってね?それに、ここに来たりして、危ない事をしては、ダメだよ?疑われるような事をして君が疑われたら、もう、君の目的は終わってしまう。いいね?」
はる「はい・・・。」
そして、私は、長州藩邸を出た。