絆物語
そこには制服姿の黒髪の長い女の子。
彼女はリビングからキッチンに行き、コップに水を汲んでごくごくと飲み干す。

「おはよう、恭子」

恭子と呼ばれた彼女は竜也をちらりと見るが、何の反応も返さずにリビングから出ようとする。

「これから部活だろ?ご飯、食べて行かなくていいのか?」

リビングから出ようとする足を止め、竜也の方を振り返る恭子。
少しの間、竜也をじーっとにらみつけた後、竜也に背中を向け扉に手をかける。

「・・・いらない」

とだけ竜也に伝え、彼女はリビングを出て行き、玄関に置いてあった鞄を持ち出発してしまった。



この二人がこの家に住んでいる。
双葉 竜也と双葉 恭子。
彼らは兄妹なのだ。
しかしここ四、五年前から彼らは会話もしないようになった。

それには原因があるのだが、追々語っていこう。

竜也は恭子が出て行った扉を眺め、ふぅとため息をついた。
そして時計に目を向ける。

時刻は6時50分。

竜也は自分で作った朝ご飯に手をつけずに、二人分の皿にラップをして冷蔵庫にしまった。

そして顔を洗い、歯を磨き、乱れた茶色の髪を直し、薄く生えてきたヒゲを処理し、外出する時に普段からかけている眼鏡をかける。

「よし、準備OKだ」

先にもう制服に着替えていたために、それほど時間はかからなかった。

彼もリビングを出て、玄関で靴を履いて、家を出ようとする。

扉に手をかけたところで振り返る。

「・・・いってきます」

小さな声でいってきますと言い、竜也は家を出て、自分の通う高校へと足を進めた。
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