艶麗な夜華
「結衣さんって……人の事が好きなの?」


それはこの前店に来たタクミさんの口から出た名前。


付き合ってはいなかった2人。


でも、きっと恭也と彼女の間にはなにかあった訳で。



ゆっくりと振り返る恭也に下を向くあたしは今、

自分が口にしたのにその答えを聞くのを怖がっている。


「誰から聞いた?ヤスか?」


「ヤスはいくら恭也の事を聞いてもなにも教えてくれなかった」


「じゃあ誰だよ」


「タクミさんがこの前お店に来て……」


「タクミから聞いたのか?」


「あたしがその人の事を知ってるって思って名前を出したみたいだけど、


知らないってわかったらタクミさんはなにも……。


その人は……恭也にとってどんな存在なの?」



「………」



黙り込む恭也。


静まり返る店内。


スピーカーから流れるジャズが次の曲に切り替わり、


ようやく恭也が口を開く。







「結衣は……俺が心底愛した女だ。


それは今も……変わらない」
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