艶麗な夜華
恭也はカウンターに両肘を掛け身を乗り出す。



「愛華、お前は翼と一緒に働いていた事があったな」



「うん、そうだね。


ただ……俺が翼からなにかを聞きだすのは難しいかな?」



「ひとつ、ヒカリから気になる話を聞いた」



また……ヒカリさん……



「なに?」



「どうやら翼には、付き合っている女が居るらしいんだ」



「そんなに気になる話ではないけど?


もちろん客には女が居る事を隠していると思うけど……


かと言って、タクミがそれをネタに翼を店に引っ張るにはちょっとね。


それに、今の翼があるのはブレイブの代表、坂神さんのおかげだよ。


俺と働いていた時の翼はとんでもなく荒れていて、


出勤してくればホスト達に喧嘩ふっかけて。


とうとう店を首になったアイツを拾ってくれたのが彼さ。


そこで翼は変わったんだ。


それは本人が1番にわかってるだろ?」



タクミさんが翼に彼女がいる事を知り、


それをお客さんにバラすと言って、


口止めとして彼を店に引っ張ったという考えは、


愛華と同じで少し無理があるように思えた。



恭也はシェルフからグラスを1つ取り出し、


水を注ぐと愛華に出す。



そして静かに話し始めた。



「いや…それはわからない。


翼は今までずっとナンバーワンで居続けてきたんだ。


女が居るなんて噂がたって、


客を失う事を恐れた可能性はある」



愛華は水を一口飲むと、


椅子に寄り掛かる。



「まぁ、たしかに女が居る事が客に知れるのは、


プラスではないね。


でも、そんな事で客が離れる程度のホストじゃないよ翼は」



「俺だってそう思うさ。


だけど、本人にはそんな風に思えるような余裕なんてねぇ。


俺達はずっとプレイヤーを離れてるから忘れてんだよ。


そういう緊張感」

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