生きて 強く
保健室前まで来たが、ドアの前で立ち止まる。



誰にも今の自分を見られたくなかった。


でも、中にはきっと保健の先生がいて、あれこれと質問してくるだろうと思うと嫌過ぎてため息が出る。


だけど今は楽になって、冷静さを取り戻す時間が欲しかった。



いつまでもこんな所で、立ち尽くしている訳にはいかない。



意を決して踏み入ることにしたが、でも恐る恐る音を立てないように、ドアをゆっくり開ける。



「し、失礼しま~す……」



潜めた声を出しながら少し開け、頭だけを突っ込んでそっと中の様子を窺う。



「センセ~、居ませんか~?」



見渡す限りでは、人の姿は目に映らなかった。



1人になりたいと願っていたにも拘わらず、誰もいないと分かると虚しさに心が潰されそうになる。
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