生きて 強く

「うぇ？　ちょっと何よ～！」



掴まれたと思ったのと同時に、琢也がその手を引いて歩き出した。



琢也に手を引かれて屋上、そして学校を背にする。




その間、沢山の生徒達にその光景を見られて、恥ずかしくて顔を上げられなかった。



もう頬を濡らすものは、どこかに行ってしまっている。



だけどまた思い出してしまうのだろう。



今はただ、琢也の手の温もりが心地良いと感じてしまっていて、忘れることが出来ているだけだ。



歩きながら空を見上げて見ると、１日が終わりを迎えようと、大きなオレンジ色の太陽が沈みかけていた。



深い青の中に僅かに混ざったオレンジ色が、目を見張るほど綺麗に映った。



「琢也～。
空、綺麗だよ～！」



「んあ～？」



間抜けな声を出しながら立ち止まって、見上げてくれる。



「んおー！　確かに綺麗だなぁ～。
時々何げ無しに空を見上げたりする事もあるけど、何せ何げ無いからなぁ～。
こうやって意識すると、すげー綺麗に見えるもんだな。
今だけ、澪に感謝！」