エリート室長の甘い素顔
プロローグ
ピピピピ……ピピピピ……
小さく鳴りだした高い電子音が、浅い眠りの中を漂っていた悠里(ゆうり)の意識を急速に浮上させる。
段階的に大きくなるよう設定された目覚ましの音がもう一段高く大きくなる前に、手を伸ばして平らなボタンをタンッと叩いた。
毛布に包まれた足元は暖かく、肩先は少し冷えている。
布団から出るのが億劫な、まだ肌寒い1月――
年末年始の連休が明けて、今日から出勤だ。
旅行や特別な用事のなかった悠里は、例年通りカレンダーに沿って休みを取った。
これでまた前年分の有給休暇はフルで繰越である。
我ながらつまらない人間だなぁと悠里は思う。
いい歳をした女が、長期の休みにやりたいことが何もない、なんて。
横向きに丸まって寝るクセのある悠里は、シーツに肘をついて半身を起こすと、頭の上に手を伸ばしてカーテンをめくった。
朝の5時半――外はまだ暗闇に沈んでいる。
昔から愛用している分厚い綿入れを羽織って階下に降りていくと、階段を下りる足音を聞きつけて、母がわざわざ廊下に顔を出した。
「おはよう、悠里」
朝食の支度の最中のはずだが、母親は何か言いたげな顔をして悠里をじっと見つめる。
「おはよう……何?」
不審げに見つめ返すと、母は軽くため息を吐いた。
「週末に、雪枝おばさまがうちに来るって言ってる」
悠里は目を丸くした。
小さく鳴りだした高い電子音が、浅い眠りの中を漂っていた悠里(ゆうり)の意識を急速に浮上させる。
段階的に大きくなるよう設定された目覚ましの音がもう一段高く大きくなる前に、手を伸ばして平らなボタンをタンッと叩いた。
毛布に包まれた足元は暖かく、肩先は少し冷えている。
布団から出るのが億劫な、まだ肌寒い1月――
年末年始の連休が明けて、今日から出勤だ。
旅行や特別な用事のなかった悠里は、例年通りカレンダーに沿って休みを取った。
これでまた前年分の有給休暇はフルで繰越である。
我ながらつまらない人間だなぁと悠里は思う。
いい歳をした女が、長期の休みにやりたいことが何もない、なんて。
横向きに丸まって寝るクセのある悠里は、シーツに肘をついて半身を起こすと、頭の上に手を伸ばしてカーテンをめくった。
朝の5時半――外はまだ暗闇に沈んでいる。
昔から愛用している分厚い綿入れを羽織って階下に降りていくと、階段を下りる足音を聞きつけて、母がわざわざ廊下に顔を出した。
「おはよう、悠里」
朝食の支度の最中のはずだが、母親は何か言いたげな顔をして悠里をじっと見つめる。
「おはよう……何?」
不審げに見つめ返すと、母は軽くため息を吐いた。
「週末に、雪枝おばさまがうちに来るって言ってる」
悠里は目を丸くした。
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