エリート室長の甘い素顔
「なあ、お前歳いくつだっけ?」

「は? ケンカ売ってます?」

 年の初めに微妙な話題を振られて、悠里は目くじらを立てた。

「売ってねぇよ。ほら、さっき若い子とか言われてたからさ。そういやいくつだったかな~と」

(ケンカ売ってる以外のなにものでもない!)

 睨みつけても、あっけらかんとした顔でこちらを見つめ返す大谷は、黙って悠里の答えを待っている。


「なんなんですか、もう! あなたの10コ下ですよ」

「え! じゃあお前、今年さん……」

 これ以上ないほど怖い顔をして睨んでやると、大谷は言いかけた途中で気まずそうに口をつぐんだ。


「……そうかぁ、まだまだ若けぇなと思ってたんだけどな」

(だから、なんなんだ、もうっ)

 思いっきり不機嫌さを全開にして顔を背けると、大谷の手が伸びてきて不意打ちに頭をポンポンと撫でられた。

 な、なんてことするの、この男――!

 固まった悠里を尻目に、大谷は「おお、来た来た」と嬉しそうに言いながら、運ばれてきた定食の盆を受け取った。

 悠里の目の前にも同じ皿の乗った盆が置かれる。

 食べながら怒っているのは嫌なので、悠里は軽くため息を吐くと、一旦不機嫌さを横に置いた。

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