エリート室長の甘い素顔
　リビングに戻ると、先ほど悠里が座っていた大谷の隣には、なぜか雪枝おばさまが座っている。

　そして彼は母と雪枝おばさまに質問責めにされていた。

「大谷さん、ご実家はどちら？」

「悠里と同じ会社ってことは、いい大学出てるのかしら」

「結婚したらどこに住む予定？　うちの親戚はみんなこの辺に住んでるんだけど……」

　悠里は慌てて、大谷の背後から話に割り込んだ。

「ちょっとやめてよ、二人とも。困らせないで」


　すると大谷はこちらを振り返って言う。

「いや、別に困ってないけどな。お前、どこに住みたい？　お父さんのこともあるし、ここから近いほうがいいだろ」

「えっ？」

（もう住むところの話？）


　悠里は戸惑いを隠せないまま、母の顔を窺う。

「……あの、いいの？」

　父がこんな状態なのに、結婚なんかして――


　すると母は少しだけ呆れたように言った。

「悠里あなた、自分の歳わかってる？　今結婚しないで、いつするのよ。25を過ぎた娘がいつまでも家にいたら、将来が心配で胃が痛くなるのよ。せっかく好きな人が貰ってくれるんだから、つべこべ言わずありがたくお嫁に行きなさい！」

< 103 / 117 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop