エリート室長の甘い素顔
 理子はかなり気遣い屋のようだ。

 まだ小学生の子が、悠里が気まずくならないよう一所懸命明るく振る舞っている。


 食事が終わって、理子はデザート、大谷はお茶、悠里はコーヒーを飲みながら一息吐いた。

「ね、理子ちゃん」

「ん?」

 悠里は、まっすぐ理子の目を見つめながら言う。

「私が入社して初めて大谷さんと会ったとき、大谷さんはもう理子ちゃんのお父さんだったの」

 理子は目をパチパチと瞬かせながら、悠里が言わんとしていることを探るように、じっとこちらを見返した。

「つまり、大谷さんが理子ちゃんのお父さんなのは、私にとっても当たり前だってこと。結婚しても、理子ちゃんのお父さんはお父さんのままだし、私もそう思ってる。それを忘れないでね」


 すると理子は、少しうつむいて何かを考えるように視線を彷徨わせた。

「じゃあ……今までと同じように、お父さんと会ってもいいの?」

 その言葉に、大谷も悠里も驚いて目を見開いた。

「当然だろ!」

「当たり前でしょっ」

 二人はほぼ同時に叫んで、互いに顔を見合わせた。


 理子は少しだけ遠慮がちに口を開く。

「わかった。じゃあ今度、家にも泊まりに行っていい? 新しいお家……見てみたい」

 悠里は微笑んでうなずいた。

「じゃあ新居には、理子ちゃんがいつでも泊まれる部屋、用意しておく」

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