エリート室長の甘い素顔
 理子との距離がそんなに早く縮まるはずはない。

 きっと少しずつ互いの様子を見ながら、近付いたり離れたりを繰り返していくのだろう。

 幸いなことに、理子のほうにも距離を縮めようとする姿勢が見える。

 それだけでも、悠里には充分だ。


「じゃあ、行くか」

 外に出た大谷がそう言って、コートのポケットから取り出したのは、婚姻届を入れてある封筒。

「え? 持ってきてたの?」

 悠里が目を丸くすると、大谷を挟んで隣に立っていた理子が「それ何?」と尋ねた。

「婚姻届だ。理子のお許しも出たしな」

「え? 理子が反対したらどうするつもりだったの?」

「ん~? 悠里は待つつもりだったみたいだけど」

 その答えに、理子は驚いてこちらを振り返った。

 悠里が黙ってうなずくと、理子は「そっかぁ」と呟いて、すぐにニコッと笑った。


「それ、理子も一緒に行きたい!」

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