エリート室長の甘い素顔
03
 その日の空は、明るい冬晴れだった。


 なんとか振り袖を着せようとする雪枝おばさまに「私、もう30になるから」と強く抵抗し、結局ラインが綺麗でシックなワンピースを着て、都内のホテルに来ている。

 そう――今日は私のお見合いの日だ。


 この間、大谷から思わぬ大ダメージを喰らって落ち込んでいた。

 週末、家に来た雪枝おばさまは「これでダメなら、もう諦めるから!」と、ものすごい強気で持参した釣書をぐいぐいと押し付けてきた。

 いつもなら写真も見ないのに、手に取ってしかもちゃんと中身を読んでしまったのは、自分で思っている以上に凹んでいたせいかもしれない。


 悠里の会社は一般にはあまり名前を知られていないが、国内でも最大手の医療・介護機器のメーカーである。
 元々は日本の零細企業だったが、十数年前に外資に買収され、今では世界各国に支社を置くグローバル企業となった。


 外資系企業であるから、社員に対する要求は厳しい。
 スキルや実務成績が上がらないと給料はどんどん減らされていく。
 逆をいえば、能力さえ示せれば若くても給料は上がっていくのだ。
 そのかわり責任は重くなる。


 そんな会社でそこそこのペースで昇進している悠里は普段も仕事漬けである。

 昔から勉強も得意でコツコツ真面目に努力するタイプだったから、現役で都内にある国立大学に入ってそのまますんなりと卒業し、今の会社に就職した。

 つまり、会社員としてはそれなりに優秀なのだ。

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