エリート室長の甘い素顔
 だがそれも、結婚というステージに入ると話は全く変わってくる。

 歳は29(しかも今年30)になるし、学歴が高すぎる。
 バランスを考えると、相手の数がものすごい絞られてしまう。


 太ってはいない(むしろ細い方だ)が、身長は平均よりも高め。
 167センチあるから、ヒールを履いてしまうと自分より背の高い男性の数も一気に少なくなる。

 悠里の会社には意外と体格のいい男性が揃っていて、職場で身長を気にしたことはないのだが、近所のそこいら辺を歩いていると「自分はデカい」ということに改めて気が付いたりする。


 昔の婚活市場でよく言われた条件、三高『高学歴・高収入・高身長』に見事に当てはまるのだ。
 ただし男女は逆なのだが。


「悠里! 来たわよっ」

 雪枝おばさまとその付き添いで一緒にきた母が、自分を呼ぶ声が響く。

(ちょっと、恥ずかしいんだけど……)

 老舗ホテルのもの静かなラウンジで大きな声を出すのは本当に勘弁してほしい。

 悠里が肩を落としながら振り返ると、雪枝おばさまと母に挟まれて穏やかな笑顔を浮かべた若い男性がこちらに歩いてくるのが見えた。

 スーツ姿や身のこなしがスラッとしており、優しげな面差しをしている。

 ハッとするほどのイケメンではないが、しばらく観察していると表情や雰囲気がとても素敵だと思えた。

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