エリート室長の甘い素顔
 若いイケメンを挟んで、雪枝おばさまと母は頬を染めてウキウキしている。

 彼のほうは、堅苦しいやり取りは避けたいと一人でこの場に来たらしく、その潔さというか、初対面の相手でもコミュニケーションに困らないのであろう自信は、好ましいと思えた。

(もじもじされても困っちゃうしね)

 悠里も入社して数年間、営業で鍛えられたおかげで対面のコミュニケーションに苦手意識はない。


「おばさまも母さんも、もう帰っていいわよ」

 そう言うと、二人は揃って「ええ~」と不満そうな表情を浮かべた。

 子どもじゃないんだから、そもそもついてこなくても良かったのだ。

 だが雪枝おばさまに関しては、悠里が敵前逃亡でもしやしないかと心配していた可能性はある。

「ちゃんと会えたんだから、あとはもう大丈夫」

 きっぱりそう告げると、雪枝おばさまは本当に渋々といった様子でうなずいた。

 もう少し彼と話をしたいが、悠里の機嫌を損ねるのは良くない……とでも考えたのだろう。

 ――とてもいい判断だと思う。


「じゃあ、ゆっくりお話してきなさい」

「安藤さん、すみませんがこの子、よろしくお願いします」

 頭を下げる二人に向かって、安藤も人の良さそうな笑みを浮かべて会釈した。

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