エリート室長の甘い素顔
 二人の背中をしばらく見送ってから、安藤は悠里を振り返ると微笑んだ。

「どうしますか? ここで少しお話でもしましょうか」

 ホテル一階のラウンジは大きなガラス張りで、冬枯れしていても綺麗な庭園が一面に見渡せる。

「いいですね。お庭が綺麗だし」

 悠里がそう答えると彼はうなずき、そっと身体を翻してウェイターに目で合図をした。

 席を案内されると先を歩くよう促され、悠里は安藤のスマートさに内心で舌を巻いた。

(デキすぎじゃないの? この人……)


 窓際の眺めがいい席に案内されると、悠里は先に一人掛けのソファに座り、安藤がその向かいに腰かけるのをじっと見つめた。

 ヒールを履いた悠里より頭半分ほど背が高く細身な体型だ。
 身のこなしもやはりスマートで、感心する。


「悠里さんは……」

 安藤が何かを言いかけて黙った。

 顔を見ると目が合って、彼はハッとした表情を浮かべた。

「あっと……すみません。何を飲まれますか?」

 スッとメニューを差し出されて、悠里は素直にそれを受け取る。

「では、ホットのコーヒーを」

 メニューをひっくり返して戻すと、今度は安藤がそれを受け取って微笑んだ。

「僕も同じにします」

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