エリート室長の甘い素顔
 片付けと身支度をしてコートを出ようとしたとき、安藤に声をかける女性がいた。

「すみません、ちょっといいですか?」


 安藤と悠里が振り返ると、おそらく20代後半の女性が二人、キラキラした目で安藤を見上げている。

「あの、もしかしてコーチとかされてるんですか?」

「すごく教えるの上手いなって思って。個人レッスンとか受けて貰えるなら、私たちもお願いしたいんですけど」


(おお……)

 悠里が思わず安藤を見上げると、彼は苦笑を浮かべて肩をすくめた。

「ごめんね。僕はコーチでもないし、レッスンじゃなくてただのデートなんだ」


 安藤の言葉に、二人は残念そうにため息を吐いた。

「なんだ~上手いからてっきり。残念」

「彼女いいなぁ、羨ましい」

 あっさりと手を振って、女性たちはコートに戻って行った。


「すごいですね……もしかして私、レッスン代払うべき?」

 悠里が半分冗談でそう聞くと、安藤は笑った。

「さっきも言ったけどデートだからね。運動が終わったから、次は美味しいごはんにしよう」

「わ、やったー!」

 時計を見ればちょうど昼で、お腹が空く時間だ。

 悠里は素直に喜び、安藤に案内されるまま駐車場に向かった。

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