エリート室長の甘い素顔
   ***

 NYから一時帰国した颯介と連れ立って、最寄り駅から二つほど離れた店に入る。


 最寄り駅前で飲むと、会社の連中に見つかって煩わしいことになるから、颯介と一緒のときは場所を吟味する必要があった。

 要は会社の有名人なのだ。
 ファンクラブと呼ばれるものまでできるくらいには。


 あいかわらず顔といいスタイルといい、人目を引く男である。
 雰囲気が華やかでまさにアイドルみたいだ。


 本人にそれを言ったら、思いきり顔をしかめた。

「大谷さん……俺をいくつだと思ってるんですか」

「いくつだっけ?」

「35ですよ!」

「ええっ!?」


(マジか……)

 見た目が変わらないから、もっと若い気がしていた。

 だが考えてみれば、颯介もすでに管理職に就いている。


「……嫁さんいくつだ?」

「ひなたは25です」


 大谷は目を軽く見開く。

「10コ下?」

「そうですよ。……ついこの間まで、二人ともあなたの部下だったんですけどね……」

 颯介が残念そうにため息を吐いた。

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