エリート室長の甘い素顔
***
いつも出勤時間が早く、まだ開いていないエントランスを素通りして従業員専用の裏口から社屋に入る。
警備員はすでに顔を覚えており、社員証を出さなくても当たり前のようにそこを通してくれる。
いつもの会釈だけで通り過ぎようとしたら「明けましておめでとうございます」と、声をかけられた。
「あ、おめでとうございます……」
咄嗟に振り返ると、その警備員はニコッと爽やかに笑った。
ぱっと見はまだ若そうだが、帽子を目深に被っており、実際の年齢はよくわからない。
足下に目をやると、なぜか制服のズボンの裾が片方捲れていた。
「裾、直したほうがいいですよ」
悠里に言われて下を覗き込んだその警備員は「あっ!」と叫んで片足を上げると、素早くそれを直した。
「すみません、ありがとうございます」
やはり爽やかだ。
余計なことでも正しいと思えばハッキリ口にしてしまう悠里は嫌われる事も多い。
だが嬉しそうに笑顔を返されて逆に面食らってしまった。
「いえ……」
軽い会釈だけして今度こそ、そこを通り過ぎる。
いつも出勤時間が早く、まだ開いていないエントランスを素通りして従業員専用の裏口から社屋に入る。
警備員はすでに顔を覚えており、社員証を出さなくても当たり前のようにそこを通してくれる。
いつもの会釈だけで通り過ぎようとしたら「明けましておめでとうございます」と、声をかけられた。
「あ、おめでとうございます……」
咄嗟に振り返ると、その警備員はニコッと爽やかに笑った。
ぱっと見はまだ若そうだが、帽子を目深に被っており、実際の年齢はよくわからない。
足下に目をやると、なぜか制服のズボンの裾が片方捲れていた。
「裾、直したほうがいいですよ」
悠里に言われて下を覗き込んだその警備員は「あっ!」と叫んで片足を上げると、素早くそれを直した。
「すみません、ありがとうございます」
やはり爽やかだ。
余計なことでも正しいと思えばハッキリ口にしてしまう悠里は嫌われる事も多い。
だが嬉しそうに笑顔を返されて逆に面食らってしまった。
「いえ……」
軽い会釈だけして今度こそ、そこを通り過ぎる。