エリート室長の甘い素顔
   ***

 悠里の都合が最優先され、河野と桑名によって企画された新年会に、無事参加することができた。


 珍しいことに参加人数が多い。

 新年会といってもすでに2月になろうとしていて、年明けの行事が一段落した頃合いだったのが幸いしたのかもしれない。

 大谷はもちろんのこと、河野、桑名の他に男性ばかりが五人ほど集まり、そこそこの人数になっている。


 紅一点の悠里は、このメンバーが酔うと大騒ぎするのをよく知っていたため、初めから隅のほうに座っていた。

 当然、大谷は皆の和の中心にいてすでに陽気に盛り上がっている。


 幹事の桑名は、空いたグラスを見つけては酒を注いだり追加注文をしたりと、世話しなく動き回る。

 掘りごたつの個室に近い席で、席数に余裕があるせいか、各自胡座をかいたり足を組んだりしながら寛いでいた。


 しばらくして河野がすすっと悠里の隣に寄ってくる。

「松村さん、お疲れ」

「お疲れさまです、河野さん。日程、合わせていただいてありがとうございました」

 悠里がすかさず礼を言うと、河野は意味ありげに笑った。

「だって、大谷さんがどうしても松村さんのスケジュールを最優先でって言うからさ。本当、愛されてるよね」

「……っ、んぐっ!」

 悠里は飲みかけたビールを吹き出しそうになり、それをなんとか堪えた。


 河野は顔を近づけてきて、こっそりと尋ねる。

「ね、大谷さんとどうなってんの?」


 思わぬ問いかけに悠里は河野の顔をまじまじと見つめた。

「どうって……」

(なんでそんなことを?)

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