エリート室長の甘い素顔
「だってさ、松村さんはわかりやすいし、だからと言って大谷さんはその辺どうしたいのかよく分かんないし。再婚する気ないのかな?」


 悠里は「わかりやすい」と言われて半分ショックを受け、半分は「やっぱり」と思った。

(顔に出てるんだろうな~)

 安藤にも同じことを指摘された。


「……分かりやすいのに何にも言われないってことは、そういうことじゃないですか?」

 悠里は冗談っぽく話したつもりだったのに、その声は思ったよりもずっと落ち込んだ風に響いてしまった。

 案の定、河野がすっと笑みを引っ込める。

 だが、その口から出てきた言葉は少し意外なものだった。


「松村さんて……意外とわかってないよね、大谷さんのこと」


(え……?)

 悠里が怪訝な表情を向けると、河野が続けて何かを言おうとしてハッとして顔を上げた。

 つられて河野の目線の先を振り返れば、大谷が真顔でこちらをじっと見つめている。

「やべぇ、後でドヤされるなこりゃ」

 河野はそう呟くと、苦笑を浮かべて立ち上がった。


「え? どうしたんですか」

 悠里が戸惑っているうちに河野はさっさと離れていき、入れ代わるようにして大谷がこちらに席を移動してきた。


「おい松村、飲んでるか? せっかく参加したのにそんな隅っこで……」

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