エリート室長の甘い素顔
   ***

 翌日、普通に出勤した悠里は午前中の空いた時間を使って営業部に顔を出した。

 フロアの中で桑名の姿を探す。

 彼はちょうど打ち合わせが終わって戻ってきたところで、悠里の姿を認めると、目を大きく見開いて駆け寄ってきた。


「松村ちゃんっ! ちょっと!」

「あ、桑名さ……」

「こっち! こっち来て!」


 なぜか打ち合わせスペースに強引に引っ張り込まれる。

 それを見ていたのか、後からすぐに河野も駆け込んできた。

「松村さん! 昨日……ちゃんと会えた?」

 真剣な表情でそう聞かれて、悠里は戸惑いながらもうなずく。

「すみませんでした……せっかくの新年会が……」

 そう言うと、河野も桑名もふうっと安心したように息を吐いた。

「よかった~……あのままだったらどうしようかと思った」

「会えたってことは、上手くいったんだよね?」


(上手く……?)

 悠里が眉根を寄せると、二人の顔色が変わった。

「え……大谷さん、追いかけたんでしょ?」

「まさか何もなかった……とか、ないよね?」


 その言葉に、悠里は二人に一体どんな想像をされていたのかと思い、顔を赤くした。

「何もありませんよ。少しだけ話して……すぐにタクシーで帰りました」


「「ええ~~っ!?」」

 ここは職場なのに、二人は悲壮な声を上げ、周囲の社員たちから何事かと注目を浴びてしまう。

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