エリート室長の甘い素顔
14階に戻るため、一緒にエレベーターに乗る。
だいたい途中で、乗り合わせの社員たちは皆降りていく。
11階に停まったら、大谷と悠里以外の人間が全員降りてしまい、そこから箱の中で二人きりになった。
悠里は操作盤の前に立っている。
ドアが閉まるのとほぼ同時に、背後に立っていた大谷が後ろからそっと悠里の手を握った。
心臓がドクンッと跳ね上がる。
全身を強張らせたまま振り返ると、大谷は軽く目を細めて微笑んだ。
悠里は思わず目をそらしてうつむく。
(手が……熱い……)
昨日も思ったが、大谷の体温は悠里よりもはるかに高い気がする。
その大きくて熱い手は、14階に到着するのに合わせてきゅっと力強く握られてから、離れた。
大谷が先に降り、悠里が後に続く。
でも悠里はその場で足を止めると、それに気が付いて振り返った大谷に、お手洗いのほうを指して言った。
「あの、先に戻っててください。私はあっちに……」
声は裏返らなかったが、微かに震えていた。
心臓は全力疾走した後のようにバクバクしていて、軽く眩暈もする。
大谷はいつもの笑みを浮かべて軽く手を上げると、先に部屋へ向かって歩き始めた。
間違いなく赤くなっている顔をなんとかしないと、部屋に戻れない――
悠里は片手で顔を覆いながら、くるっと踵を返してお手洗いに駆け込んだ。
だいたい途中で、乗り合わせの社員たちは皆降りていく。
11階に停まったら、大谷と悠里以外の人間が全員降りてしまい、そこから箱の中で二人きりになった。
悠里は操作盤の前に立っている。
ドアが閉まるのとほぼ同時に、背後に立っていた大谷が後ろからそっと悠里の手を握った。
心臓がドクンッと跳ね上がる。
全身を強張らせたまま振り返ると、大谷は軽く目を細めて微笑んだ。
悠里は思わず目をそらしてうつむく。
(手が……熱い……)
昨日も思ったが、大谷の体温は悠里よりもはるかに高い気がする。
その大きくて熱い手は、14階に到着するのに合わせてきゅっと力強く握られてから、離れた。
大谷が先に降り、悠里が後に続く。
でも悠里はその場で足を止めると、それに気が付いて振り返った大谷に、お手洗いのほうを指して言った。
「あの、先に戻っててください。私はあっちに……」
声は裏返らなかったが、微かに震えていた。
心臓は全力疾走した後のようにバクバクしていて、軽く眩暈もする。
大谷はいつもの笑みを浮かべて軽く手を上げると、先に部屋へ向かって歩き始めた。
間違いなく赤くなっている顔をなんとかしないと、部屋に戻れない――
悠里は片手で顔を覆いながら、くるっと踵を返してお手洗いに駆け込んだ。