エリート室長の甘い素顔
「海里(かいり)!」
大声で弟の名前を呼ぶ。
焦って奥から出てきた弟の海里は「ねえちゃん!」と泣きそうな顔で呼び返した。
今年就職したばかりの歳の離れた弟は、不安からか半分パニックに陥っている。
靴を放り投げて家に上がり、弟の腕を掴んだ。
その背中を撫でながら問いかける。
「何があったの?」
悠里の心臓もバクバクと激しい音を立てているが、それは今まで感じたことがないような嫌なものだった。
「父さんがいきなり倒れた。それから意識なくて……すぐに救急車呼んだんだけど、救急の人は『脳梗塞じゃないか』って」
(脳梗塞――?)
悠里は一瞬、眩暈に襲われた。
父は普段から血圧が高く「俺も危ないよなぁ」などと言いながら、まだまだ若いから平気だと特に何もしていなかった。
弟と一緒に廊下に膝を付いた悠里の肩を、ポンポンと誰かが優しく叩いた。
「悠里さん、落ち着いて。怖いだろうけど、今出来ることをしましょう」
振り返って見上げると、安藤が冷静な眼差しでこちらを見ている。
その目を見て、悠里の頭もゆっくりと回りだした。
「そう、ですね。まずは、入院の支度しなきゃ……」
「連絡が来たら、すぐに病院に向かいましょう。車はありますか?」
「車なら、父のが……」
安藤は微かな笑みを浮かべて言った。
「よければ僕が運転します。二人とも動揺されてるでしょうし。さ、準備しましょう」
大声で弟の名前を呼ぶ。
焦って奥から出てきた弟の海里は「ねえちゃん!」と泣きそうな顔で呼び返した。
今年就職したばかりの歳の離れた弟は、不安からか半分パニックに陥っている。
靴を放り投げて家に上がり、弟の腕を掴んだ。
その背中を撫でながら問いかける。
「何があったの?」
悠里の心臓もバクバクと激しい音を立てているが、それは今まで感じたことがないような嫌なものだった。
「父さんがいきなり倒れた。それから意識なくて……すぐに救急車呼んだんだけど、救急の人は『脳梗塞じゃないか』って」
(脳梗塞――?)
悠里は一瞬、眩暈に襲われた。
父は普段から血圧が高く「俺も危ないよなぁ」などと言いながら、まだまだ若いから平気だと特に何もしていなかった。
弟と一緒に廊下に膝を付いた悠里の肩を、ポンポンと誰かが優しく叩いた。
「悠里さん、落ち着いて。怖いだろうけど、今出来ることをしましょう」
振り返って見上げると、安藤が冷静な眼差しでこちらを見ている。
その目を見て、悠里の頭もゆっくりと回りだした。
「そう、ですね。まずは、入院の支度しなきゃ……」
「連絡が来たら、すぐに病院に向かいましょう。車はありますか?」
「車なら、父のが……」
安藤は微かな笑みを浮かべて言った。
「よければ僕が運転します。二人とも動揺されてるでしょうし。さ、準備しましょう」