エリート室長の甘い素顔
12
 病院に到着し、駐車を安藤に任せて、悠里と弟は先に休日受付の窓口に走った。


 事務員に案内され、上階の手術室の並びにある家族控室に入る。
 そこで待っていた母は、二人の顔を見て泣きそうな表情を浮かべた。

 ひどく青ざめて一気に歳を取ってしまったように、とても疲れた顔をしている。


 話を聞けば、医師の診断は脳出血――

 手術にはまだまだ時間がかかるという。


 しばらくして車を置いた安藤が、やはり同じように案内されて控室まで来た。

 その顔を見た母は驚いて一瞬目を丸くする。

「……安藤さん?」

「ここまで車で送ってもらったの。私たちが動揺してたから」

 悠里がすかさず説明すると、母はすぐに申し訳なさそうな顔をして立ち上がった。

「ごめんなさいね、安藤さん。こんな……」

 頭を下げようとする母を、安藤が制して言った。

「いえ、ちょうど悠里さんを家までお送りしたところだったもので。困ったときはお互いさまです」


 恐縮する母を宥めて、安藤は悠里に向かって手招きをする。

 傍に寄ると、悠里の手に車のキーを握らせて言った。

「僕はここで失礼するよ。でも悠里さん、帰るときも必要なら呼んでくれていいから。家もここから近いしすぐに来られる。……お願いだから無理はしないで」

 安藤の優しい言葉に、悠里はうなずいた。

「ありがとうございます……本当に助かりました」

 ポンと軽く肩を叩き、「じゃあね」と言って安藤は帰っていく。

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