月見酒 〜天然彼女と俺様彼氏の別れ〜
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「あー……無理。なんかしっくり来ないんだよねぇ」
私はそう呟くと、キーボードを叩いていた手を止めて首をグリグリと回した。
長い間ノートパソコンのディスプレイを見つめていたせいだろうか、バキバキと音が鳴る首をさすりながら、私は自分の文章を見直していく。
そして眉を寄せると、首を小さく横に振った。
「――うん。なんかこう、全くトキメかない」
こんな文章、とても人に見せられん。
そんな風に一人ごちつつ、私は1時間かけて書いた文章を綺麗さっぱり消していく。
残ったのは、一文字も無くなった真っ白なテキストボックスのみ。
「………………」
先ほどまでは文字で埋まっていた――否、『埋めていた』それを無言で見つめながら、私は『納得のいく文章』を掛けない理由についてボンヤリと思いを馳せた。