Smile!

6th contact《追加》

眉間をさすりながら、六が正面のソファーにドカッと腰を下ろす。


「やっぱあいつに関わるとろくな事がねー」


みきりさんは既に颯爽と出て行ってしまっているので、この事務所には私と六だけだ。


ニャー


失礼。私と六と猫二匹だけだ。


三毛猫たまは、さっきから黒猫ホームズとデスクの上でべったりしている。


いつの間にか仲良くなっちゃって……。


「で?」


六に話し掛けられて、私はハッと視線を戻す。


仏頂面のまま、腕組み・足組みで私を真っ直ぐ見つめている。


「なんであいつについて行かなかった?俺なんかより情報網も顔も広いあいつの方が、あんたの記憶障害の原因も治療法も見つかる可能性があるんじゃないのか?」


「そう……かもしれないですね」


みきりさんは帰る前に私に一緒に来ないかと言った。

帰る場所の無い私に住むところも貸し出すし、記憶を取り戻すための調査もすると。


六は少し怪訝そうな顔になった。


「なら……」

「六……言ってくれましたよね?『こいつは俺の助手だ』って」

「あれはあいつに合わせるためにだな……」

「それでもいいんです!私を……」


外の雨は止んでいた。


「このままあなたの助手としてここに置いてくれませんか?」


私は、自分でも不思議と叫んでいた。


「炊事・洗濯・掃除何でもします。だからここに住み込みで働かせて下さい!私……自分の記憶は自分で取り戻したいんです!だから―――」

「わかった、わーかったから!落ち着け!」


あ。


テーブルを乗り越えて、六のYシャツの胸ぐらを掴んでいる自分に気がついた。

気恥ずかしさから、パッと手を離すと、私は元の位置に戻って俯く。
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