チューリップの花束に愛を込めて




学校に着くと、由奈ちゃんはもう教室にいた。


高校最後のクラス替えで、由奈ちゃんと同じクラスになってしまったあたし。


健太は隣のクラスだから、直接、二人が一緒にいるところを見なくて済んだけど。



でも、きっと健太が由奈ちゃんに会いに来た時とか、そういうタイミングで二人のことを見るんだろうな…




『由奈ー、おめでとー!!』


あたしの耳にも、由奈ちゃんの友達が告白がOKだったことへの喜びの声が届く。


視線には喜びのあまり抱き合う由奈ちゃんと友達の姿…



『ありがと、美々がいっぱい励ましてくれたお陰だよ』


そう言って、可愛らしく微笑む由奈ちゃん。



きっと、あたしはあんな風に可愛い声で、あんな風に可愛いこと言えない。


健太はそういうところに女の子らしさを感じて好きになったのかな…?


もし、あたしがあの子との違いをもっと早く見つけていたら、それであの子のように可愛らしく振舞うことができていたら…


そしたら、健太はあたしを見てくれた?


“幼馴染”のあたし、じゃなくて、“女の子”としてのあたしを。




でも、そんなこと無理だよね…。


だって、あたし、あんな風に可愛い声、出せないもん。

あんな風に可愛らしいこと言えなくて、可愛らしい振る舞いなんて出来やしない。


気づいてても、それでもあの子のようなあたしじゃなくて、健太も知ってる、あたしらしいあたしで勝負したかったと思う。




けど、そんなことどんなに自分の中で議論していても、もう無理なんだよね…。




あたし、バカだなぁ…



もう、健太のことは、“幼馴染”に戻さなきゃ。



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