チューリップの花束に愛を込めて


『……え…?』


健太は振り返り、言葉の主を見つめる。



『健太くんの彼女は私だよね?
 健太くんは私より亜季さんとの方がいいの?』


由奈ちゃんの悲しそうな瞳が、健太の心に刺さったのだろう。

あたしの腕を引く、健太の力が弱くなった。



ほら…


健太はそんなことをあたしに言ってくれたって、どうせ…あの子の言葉にあたしの手なんか簡単に離しちゃうじゃんか…



あたしは健太の手から解放され、その場に立ちすくんだ。





『…あ…いや…由奈ちゃんのことは大切だよ』





ほら、あたしにあんなことを言ってくれてても、あの子にそんな言葉を言うじゃないか…




健太は少し困った顔をしてる。

由奈ちゃんはとても悲しい顔をしている。



けど、二人より、あたしの方が可哀想でしょ…?


好きな人は取られて、好きな人に追いかけてもらってもこんな状態で…





でも、もうどうにもならないと感じた。




『健太、彼女が出来た人は、彼女を一番にするんだよ?』


あたしは、そう言葉にしていた。



バカだ…

アホすぎる。



分かってるけど、自分だって苦しいけど。


それでも、やっぱり、健太のそういう顔は見たくないよ…




『……亜季……』


健太の視線が再びあたしに向けられたけど、それでもあたしはその視線を反らした。




『あ、そうだ!
 由奈ちゃんにお願いしたいことがあるんだけど、いいかな?』


あたしの言葉に、由奈ちゃんの視線があたしに移る。



『実は、健太、寝起きが悪くて、いつもあたしが起こしてたんだけど…
 あたしも本当は朝辛くてね、だから健太の起こし係を由奈ちゃんに頼めないかな?』


『…え…?』


由奈ちゃんは健太を見つめる。



『健太、そうしてもらいなよ?』


あたしは健太にとどめをさす。





『…でも、亜季…』



『あたしだって、朝はユックリしたいの!』


そう、笑ってみせた。


だって、あたしが言ったんだもん。

あたしが二人に提案したんだもん。


あたし、傷ついてます、なんて顔、出来る訳がない。


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